こんにちは。人生の後半を穏やかに整えるヒントを発信している、中山眞治です。

筆者近影 作品「月のあかりに濡れる夜Ⅳ」と共に
さて、親が認知症と診断されたとき、多くの家族は「これからどうすればいいのだろう」と不安になるでしょう。
しかし、本当に大切なのは介護を単に始めることではなく、介護を受ける本人が、できるだけ長く自分らしく生活できる環境を整えてあげることです。
認知症になったからといって、すぐに何もできなくなるわけではありません。適切な支援や住環境整備によって、移動や排泄、食事などの日常生活動作「ADL(Activities of Daily Living)」を維持できる可能性があります。
とくに排泄の自立は、人としての尊厳を守るうえで非常に重要です。自分の力でトイレへ行き、排泄できることは、生活意欲や自己肯定感にもつながり、結果として心身の健康維持にも大きな影響を与えるのです。
そのため認知症介護では、単に見守るだけでなく、介護保険制度や福祉用具、住宅改修なども活用しながら、「できることを続けられる環境」を整えることが重要になります。
この記事では、地域包括支援センターへの相談から要介護認定、ケアマネジャーとの連携、福祉用具の活用、住環境整備まで、認知症になった後に、家族が取るべき具体的な行動を順番に解説しましょう。
本人の尊厳と自立を守りながら、家族も無理なく支え続けるための、実践的な手順書としてお役立てください。
介護を受けるようになっても、利用者がその人らしい生活を送れているかを評価する指標として用いるQOL(Quality of Life、生活の質)の概念が重要です。
それでは、早速どうぞ!
親が認知症と診断されたら最初に相談すべき場所とは?

親が認知症と診断されたとき、多くの家族は大きな不安を抱えます。これまで、普通に生活していた親が少しずつ変化し、何をどのように支援すればよいのか分からなくなるからです。
しかし、認知症の介護は、家族だけで抱え込むものではありません。日本には、高齢者やその家族を支える公的な仕組みが整備されています。
重要なのは、診断を受けた直後から適切な相談先につながることです。
本章では、早い段階で専門家の支援を受けることで、本人にとっても、家族にとっても負担を軽減しながら生活を続けることができる点について解説します。
家族だけで抱え込まないことが重要
認知症と診断されると、家族は「自分たちで何とかしなければならない」と考えがちです。しかし、その考え方は、介護疲れや精神的負担につながる場合があります。
認知症は、長期間にわたって付き合っていく病気です。短距離走ではなく、長距離走のようなものです。そのため、最初から家族だけで解決しようとせず、利用できる制度や専門職の力を借りることが大切です。
とくに、40代・50代の子世代は仕事や家庭との両立が必要になるケースが少なくありません。介護離職や、心身の疲弊を防ぐためにも、早い段階で相談体制を整えておきましょう。
また、認知症の初期段階では、本人に自覚がある場合もあります。本人の意思を尊重しながら、支援体制を構築することが、今後の介護を円滑に進めるうえで重要になります。
地域包括支援センターの役割とは
親が認知症と診断された場合に、最初に相談したいのが地域包括支援センターです。
地域包括支援センターは、市区町村が設置している高齢者総合相談窓口です。介護、医療、福祉、権利擁護など幅広い相談に対応しています。
センターには、保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門職が配置されており、高齢者本人や家族からの相談を無料で受け付けているのです。
認知症の症状が出始めた場合には、
- 介護保険の利用方法
- 要介護認定の申請方法
- 認知症対応サービス
- 家族支援制度
などについて、具体的なアドバイスを受けられます。
どこへ相談すればよいか分からない場合でも、まず地域包括支援センターへ連絡すれば適切な支援先へつないでもらえるのです。この点が一番重要なので、記憶しておきましょう。
尚、全国の地域包括支援センターについては、次のリンクから検索できます。

全国の地域包括支援センター一覧|安心介護紹介センター(旧かいごDB)
相談時に準備しておきたい情報
地域包括支援センターへ相談する際には、事前に情報を整理しておくと話がスムーズに進みます。
たとえば、
- 年齢
- 家族構成
- 診断内容
- 現在の生活状況
- 困っていること
などを書き出しておくとよいでしょう。
また、
- 物忘れが増えた
- 同じ話を繰り返す
- 火の消し忘れがある
- 通帳や財布の管理が難しい
などの、具体的なエピソードを整理しておくと、今後必要となる支援内容を判断しやすくなります。
相談時には、完璧にまとめる必要はありません。現状をありのまま伝えることが大切です。
相談後の流れを知っておく
地域包括支援センターへ相談すると、多くの場合は、介護保険制度の利用を視野に入れた支援が始まります。
必要に応じて、要介護認定の申請を行い、認定結果に応じたサービスの利用へ進めます。また、認知症の進行状況によっては、医療機関との連携や、家族支援サービスの紹介を受けることもできるのです。
重要なのは、一度相談して終わりではないということです。認知症は、症状が変化するため、定期的に状況を共有しながら支援内容を見直していく必要があります。
最初の相談は、今後の介護生活のスタート地点です。困ったときだけ利用する場所ではなく、継続的に頼れるパートナーとして、地域包括支援センターを活用していきましょう。
親が認知症と診断されたら、まずは家族だけで抱え込まず、専門機関へ相談することが大切です。とくに、地域包括支援センターは、高齢者と家族を支える総合窓口として重要な役割を担っています。
早い段階で相談することで、介護保険制度や各種支援サービスを、適切に活用できるようになれるのです。

介護は、長期間続く可能性があるからこそ、最初の一歩を正しく踏み出すことが将来の安心につながります。
親が認知症になる前から準備しておくことで、今回ご紹介した相談や介護手続きをよりスムーズに進めることができます。 「親が認知症になる前に確認したい5つのこと|40代から始める家族の備え」もあわせてご覧ください。
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要介護認定とは?介護保険サービスを利用するための第一歩

親が認知症と診断された後に、多くの家族が直面するのが「介護保険はどう使うのか」という問題です。介護サービスや福祉用具、住宅改修などの支援を受けるためには、まず要介護認定を受ける必要があります。
介護保険制度は、40歳以上で保険料を負担している社会保障制度ですが、実際に活用する場面になるまで、仕組みを詳しく知らない人も少なくありません。
認知症の介護では、早い段階から制度を活用することで、本人の安全確保と家族の負担軽減につながります。
本章では、要介護認定の流れと、利用開始までの手順を分かりやすく解説しましょう。
介護保険制度の基本を理解する
介護保険制度は、高齢者が必要な介護サービスを受けられるように設けられた公的制度です。
65歳以上で、介護や支援が必要になった場合には、市区町村へ申請し、認定を受けることで各種サービスを利用できるようになれます。認知症の場合、身体機能が比較的保たれていても、認定対象になれることもあります。
家族から見ると、「まだ歩けるから大丈夫」と思える状態でも、判断力の低下や金銭管理の困難さ、徘徊リスクなどが認定の対象となる場合があるのです。
認定区分には、
- 要支援1
- 要支援2
- 要介護1〜5
があります。
数字が大きくなるほど支援の必要度が高くなり、利用できるサービス量も増えていきます。認知症介護では、身体機能だけでなく、日常生活への影響全体を見て判断されることを理解しておきましょう。基準の詳細は次の通りです。

要介護認定申請の方法
申請は、市区町村の介護保険担当窓口、または地域包括支援センターで行います。本人が申請することもできますが、多くの場合は家族が手続きを代行します。
申請時には、
- 介護保険被保険者証
- 本人確認書類
- 主治医の情報
などが必要になります。
認知症の場合、主治医の意見書が重要な判断材料になりますので、かかりつけ医との連携も大切です。申請そのものは難しくありませんが、介護経験のない家族にとっては不安も多いでしょう。
そのような場合には、地域包括支援センターへ相談しながら進めると安心です。申請後は、認定調査の日程調整が行われ、実際の認定手続きへ進みます。
認定調査では何を確認されるのか
認定調査では、市区町村から派遣された調査員が、本人の生活状況を確認します。ここで家族が陥りやすいのが、「良く見せようとしてしまう」ことです。
たとえば、
- 普段はできないことを調査日だけ頑張る
- 家族が補助している事実を伝えない
- 失敗や困りごとを隠してしまう
などです。
しかし、実態よりも軽く評価されると、必要な支援を受けにくくなる場合もあります。
調査時には、
- 服薬管理ができるか
- 金銭管理ができるか
- 火の始末ができるか
- 一人で外出して迷わないか
など、日常生活の状況を正確に伝えることが大切です。
認知症の場合には、身体機能だけでなく、認知機能に関する評価も重要になります。家族が日頃の様子をメモにまとめておくと、調査時に伝え漏れを防ぐことができます。
認定結果が出た後の流れ
認定結果は、通常30日程度で通知されます。認定が決定すると、その区分に応じて介護サービスの利用が可能になるのです。
ここで初めて、
- デイサービス
- 訪問介護
- 福祉用具貸与
- 住宅改修
- ショートステイ
などの、サービスの利用へ進むことができます。
認知症介護では、本人の状態に合わせて、サービス内容を柔軟に組み合わせることが重要です。また、認知症は進行性の病気であるため、現在の認定区分が将来も続くとは限りません。状態が進行した場合には、区分変更申請も可能です。
介護保険制度は、一度認定を受けたら終わりではなく、その後も継続的に活用していく仕組みです。家族が制度を理解して、適切なタイミングで見直しを行うことで、より安心した介護生活につながります。
要介護認定は、介護保険サービス利用の入口となる重要な手続きです。認知症の場合には、身体機能だけでなく、認知機能や生活への影響も評価対象となるのです。
ケアマネジャーとの連携が介護生活を大きく左右する

要介護認定を受けた後、認知症介護を支える中心的な存在になるのがケアマネジャーです。介護保険サービスを利用する際に、多くの家族はデイサービスや訪問介護に目が向きます。
しかし実際には、それらのサービスを適切に組み合わせ、継続的に調整してくれるケアマネジャーの存在が、介護生活全体を左右すると言っても過言ではありません。
認知症は、症状が徐々に変化していく病気です。そのため、一度サービスを決めたら終わりではなく、変化に応じて支援内容を見直していく必要があります。
本章では、ケアマネジャーとの上手な付き合い方について解説しましょう。
ケアマネジャーとはどんな存在か
ケアマネジャーは、正式には「介護支援専門員」と呼ばれます。主な役割は、本人や家族の希望を聞きながら、介護サービス計画(ケアプラン)を作成し、必要な事業所との連絡調整を行うことです。
認知症介護では、
- デイサービス
- 訪問介護
- 福祉用具貸与
- ショートステイ
- 住宅改修
など、多くのサービスが関わってきます。
家族だけで、それらを調整するのは非常に大変です。ケアマネジャーは、それぞれのサービスをつなぐ司令塔のような役割を担っています。
また、介護保険制度は改正も多く、一般の人には分かりにくい部分があります。制度の専門家として助言を受けられる点も大きなメリットです。
介護が始まると、家族は不安や戸惑いを抱えますが、困ったときに相談できる存在がいるだけでも精神的な負担は大きく軽減できます。
良いケアマネジャーを見極めるポイント
ケアマネジャーには個人差があります。もちろん、多くの方が熱心に支援してくれますが、相性や得意分野の違いもあるのです。
良いケアマネジャーを見極めるポイントとして、
- 話を丁寧に聞いてくれる
- 説明が分かりやすい
- 連絡が早い
- 家族の意見を尊重してくれる
- 認知症支援に詳しい
などが挙げられます。
逆に、
- 相談しづらい
- 質問しても、曖昧な回答が多い
- 本人や家族の希望を充分に聞かない
と感じる場合は注意が必要です。
介護は、長期間続く場合があります。信頼関係を築ける相手かどうかは非常に重要です。実際に、「この人なら相談できる」と感じられることが、良いケアマネジャーを見極める最大のポイントかもしれません。
ケアプラン作成で家族が伝えるべきこと
ケアプラン作成時には、家族が遠慮せず現状を伝えることが大切です。
認知症介護では、
- 徘徊の不安がある
- 夜間に何度も起きる
- 服薬管理が難しい
- 火の始末が心配
- 金銭管理ができない
など、日常生活の困りごとを具体的に伝える必要があります。
また、家族側の事情も重要です。
たとえば、
- 仕事を続けながら介護している
- 遠距離介護である
- 配偶者も高齢で支援が難しい
などの状況によって、必要な支援内容は変わるのです。
家族が、無理をしている状況を隠してしまうと、本当に必要なサービスが組み込まれないことがあります。
介護を続けるためには本人だけでなく、家族を守る視点も欠かせません。遠慮せず、現実を伝えることが、結果的に良い支援につながるのです。
定期的な見直しの重要性
認知症は進行性の病気であり、状態が変化していく可能性があります。そのため、一度作成したケアプランも定期的な見直しが必要です。
たとえば、
- 初期は、週1回のデイサービスだった
- 歩行が不安定になった
- 徘徊傾向が強くなった
- 家族の負担が増えた
などの変化があれば、サービス内容も見直す必要があります。
また、ケアマネジャーとの相性が合わないと感じた場合には、変更することも可能です。「担当者を変えてはいけない」と思い込む必要はありません。
介護保険制度は、利用者のための制度です。本人と家族が、安心して生活できることが最も重要です。定期的に、状況を共有しながら支援内容を調整していくことで、認知症介護は、より安定したものになります。
ケアマネジャーは、認知症介護における重要なパートナーです。介護サービスの調整役としてだけでなく、家族の相談相手としても大きな役割を担っているのです。
良い関係を築き、現状や困りごとを正確に伝えることで、本人と家族に合った支援体制を整えることができます。

介護を長く続けていくためには、ケアマネジャーとの連携を大切にしながら、定期的な見直しを行うことが重要です。
福祉用具を活用して親の安全と家族の負担を軽減する

認知症介護では、家族の見守りや介助だけでは、安全な生活を維持することが難しくなる場合があります。
認知機能の低下によって、判断力が弱くなったり、加齢による身体機能の低下が重なったりすると、転倒や事故の危険性も高まります。そこで活用したいのが福祉用具です。
福祉用具と聞くと、車イスや介護ベッドを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし実際には、日常生活を支えるさまざまな用具があり、本人の自立支援と、家族の介護負担軽減に大きく役立ちます。
認知症介護では、「できないことを補う」のではなく、「できることを続けられるように支援する」という考え方が重要です。
本章では、福祉用具もその視点で選ぶことが大切になる点について解説します。
認知症介護で役立つ福祉用具とは
認知症介護では、身体機能だけでなく、認知機能の低下による事故予防も重要になるのです。
たとえば、
- 立ち上がりが不安定になった
- 夜間にトイレへ行く回数が増えた
- 段差につまずきやすくなった
- 一人歩きが心配になってきた
といった場面では、適切な福祉用具が大きな助けになります。
とくに、高齢者は転倒をきっかけに骨折し、その後寝たきりから、認知症の進行へつながってしまうケースも少なくありません。認知症の症状だけを見るのではなく、身体機能の変化にも目を向けながら用具を活用することが重要です。
また、本人が使いやすいことも大切です。高機能な用具でも使い方が複雑であれば、認知症の方にとってはかえって混乱の原因になることもあります。
福祉用具選びでは、安全性だけでなく、本人が無理なく利用できるかという視点も欠かせません。
手すりや歩行補助用品の活用
比較的早い段階から、導入しやすいのが手すりや歩行補助用品です。高齢になると足腰の筋力が低下し、立ち上がりや歩行が不安定になります。
とくに、認知症が進行すると注意力が低下し、
- 敷居につまずく
- 廊下でふらつく
- トイレで転倒する
といった事故が起こりやすくなるのです。
こうしたリスクを軽減するために、
- 置き型手すり
- 歩行器
- 四点杖
- 歩行補助杖
などを活用する方法があります。
介護保険の、福祉用具貸与制度を活用できる場合もありますので、購入前に確認しておきましょう。
また、家族が「まだ早い」と考えて導入を先延ばしにすることがありますが、転倒してからでは遅い場合もあります。予防的な視点で早めに検討することが重要です。
高齢者は、カーペットや絨毯の、わずか1~2cmの段差でも転倒してしまうことを記憶しておく必要があります。また、床を這う電気コードでもつまずいたり、床に広げたままの新聞などでも、滑って転ぶことがあるので注意が必要になります。
見守り機器や徘徊対策グッズ
認知症介護で、家族が特に不安を感じるのは徘徊ではないでしょうか。本人には外出している自覚があっても、目的地や帰宅方法が分からなくなり、行方不明になるケースがあります。
そのため近年では、
- 人感センサー
- 離床センサー
- GPS端末
- 位置情報確認機器
- ドア開閉センサー
などの見守り機器が活用されているのです。
これらの機器は、家族の負担を軽減するだけでなく、本人の安全確保にも役立ちます。ただし、監視することが目的ではありません。
認知症の方の尊厳を守りながら、安全な生活を支援することが本来の目的です。導入する際には、本人の気持ちにも配慮しながら、検討することが大切です。
福祉用具専門相談員に相談するメリット
福祉用具は種類が多く、どれを選べばよいか分からない家族も少なくありません。そこで頼りになるのが福祉用具専門相談員です。
福祉用具専門相談員は、
- 身体状況
- 住環境
- 介護状況
を確認しながら適切な用具を提案します。
たとえば同じ歩行器でも、
- 屋内向き
- 屋外向き
- 座面付き
- コンパクトタイプ
など多くの種類があるのです。
また、福祉用具だけで問題が解決しない場合には、住宅改修や介護サービスとの組み合わせを提案してくれることもあります。
重要なのは、「用具を選ぶこと」ではなく、「安全に生活できる環境を作ること」なのです。専門職へ相談することで無駄な購入を防ぎ、本人に合った支援を受けやすくなれます。
福祉用具は、認知症介護を支える重要な手段の一つです。
手すりや歩行補助用品、見守り機器などを適切に活用することで、本人の安全を守りながら家族の負担も軽減できます。大切なのは、症状に合わせて早めに検討することが必要になります。
住宅改修と住環境整備で安心して暮らせる家をつくる(制度・基本編)

認知症介護では、介護サービスや福祉用具の活用だけではなく、住まいそのものを安全な環境へ整えることも重要です。
認知症の方は、判断力や注意力が低下するため、これまで問題なく生活していた住環境でも、思わぬ事故が発生することがあります。また、加齢による身体機能の低下も重なることで、転倒や骨折の危険性が高まります。
介護が必要になってから、慌てて環境整備を始めるのではなく、早い段階から住まいを見直しておくことで、本人の安全性を高めるだけでなく、家族の介護負担軽減にもつながるのです。
住環境整備は、「介護のための改造」ではありません。
本章では、本人ができるだけ長く自立した生活を続けられる環境づくり、という視点で考えることが大切な点について解説します。
認知症の親が暮らしやすい住環境とは
認知症の方にとって、暮らしやすい住環境とは、「分かりやすく、安全で、安心できる環境」です。
認知症が進行すると、
- 段差に気づきにくい
- 方向感覚を失いやすい
- 物の置き場所が分からなくなる
- 危険を予測しにくくなる
といった変化が現れることがあります。
そのため、
- 通路を広く保つ
- 不要な家具を減らす
- 床に物を置かない
- 充分な照明を確保する
などの工夫が有効です。
また、急激な環境変化は、混乱を招く場合があります。家具の配置を頻繁に変えたり、大規模な模様替えを行ったりすると、本人が不安を感じることがあります。
安全対策を進める際には、住み慣れた環境をできるだけ維持しながら改善することが重要です。
介護保険で利用できる住宅改修制度
介護保険制度では、一定の条件を満たす住宅改修に対して、補助を受けることができます。一般的には20万円を上限として、費用の一部が支給される制度です。
対象となる主な工事には、
- 手すりの設置
- 段差の解消
- 滑りにくい床材への変更
- 引き戸への交換
- 洋式便器への変更
などがあります。
ただし、工事を始めてから申請するのではなく、原則として事前申請が必要です。知らずに先に工事を行ってしまうと、補助対象外になる場合もあるのです。
そのため、住宅改修を検討する際には、担当ケアマネジャーや市区町村窓口へ、事前に相談することが重要です。制度を上手に活用することで、経済的な負担を抑えながら安全な住環境を整えることができます。
転倒・事故を防ぐための工夫
高齢者の介護では、転倒予防が非常に重要です。とくに認知症の方は、自分の身体能力の低下を正しく認識できない場合があります。
そのため、
- 玄関の段差
- 浴室の出入り口
- トイレ周辺
- 階段
などは重点的に確認したい場所です。
また、夜間の転倒事故も少なくありません。
夜中にトイレへ向かう際、
- 照明が暗い
- 廊下に物が置かれている
- 床が滑りやすい
といった状況が、事故につながることもあるのです。
人感センサー付き照明や、足元灯なども有効です。さらに、浴室は家庭内事故が多い場所です。滑り止めマットや、手すりの設置によって、転倒リスクを大きく軽減できます。
介護では、「転んでから対策する」のではなく、「転ぶ前に予防する」という考え方が重要です。
福祉住環境コーディネーターの視点で考える安全対策
住環境整備で大切なのは、単に設備を増やすことではありません。本人の身体状況、認知機能、生活習慣を踏まえながら、住環境全体を考えることです。
たとえば、手すりを設置しても使う習慣がなければ、充分な効果は期待できません。また、便利そうな設備を増やしすぎると、かえって混乱を招く場合もあります。
認知症介護では、
- 分かりやすさ
- 使いやすさ
- 安全性
のバランスが重要になるのです。
福祉住環境コーディネーターの視点では、「事故を防ぐ環境づくり」と「自立を支える環境づくり」の両立を目指します。
家の中を危険のない空間へ変えるだけでなく、本人ができることを維持できる環境を整えることが理想です。その積み重ねが、認知症になっても、安心して暮らし続けられる住まいにつながるのです。
住宅改修や住環境整備は、認知症介護における重要な安全対策です。手すりの設置や段差解消などの住宅改修だけでなく、家具の再配置や照明環境の見直しも大切な取り組みになります。
介護保険制度を活用しながら、早めに環境整備を進めることで、本人の自立を支え、家族の負担も軽減できるのです。

認知症になっても、安心して暮らせる住まいづくりを意識することが、これからの介護生活を支える大きな基盤となるでしょう。
介護が始まる前の段階から住まいを整理しておくことも大切です。 「親の介護が気になり始めたら|40代から始める実家の片付けと住まいの整理術」も参考になります。
福祉住環境コーディネーターがイメージする「本当に安全な家」とは?

認知症介護では、介護保険サービスや福祉用具を活用することも大切ですが、それだけで安心して暮らせる環境が整うわけではありません。
実際には、住まいそのものが本人の身体状況や、認知機能の変化に対応できているかどうかが、生活の質や安全性を大きく左右します。
たとえば、今は問題なく歩けていても、将来的に車イスを利用する可能性があります。また、本人だけでなく介助する家族や、介護職員が安全に動けるスペースが確保されているかも重要なポイントです。
福祉住環境コーディネーターは、「今の暮らし」だけでなく、「これからの暮らし」まで見据えて住環境を考えます。
本章では、住宅改修や住環境整備を進める際に、知っておきたい専門的な視点について解説しましょう。
車イス生活を見据えた通路幅と曲がり角の確認
多くの人は、「今は歩けるから大丈夫」と考えます。しかし介護では、将来を見据えた住環境整備が必要です。たとえば、車イスは約60~70cm程度の幅があります。さらに方向転換にはかなりのスペースが必要になります。
とくに問題になりやすいのが、
- 廊下の幅
- L字コーナー
- 玄関周辺
です。
家を建てた当時は問題なくても、介護が始まると「曲がれない」という問題が起こります。
ドアは開き戸より引き戸が有利な理由
介護現場では、非常によく出る話です。
開き戸は、
- 車イスで開けにくい
- 介助者が入りにくい
- 転倒時に開かなくなる
という問題があります。
そのため、住宅改修では引き戸化が検討されるケースは少なくありません。とくに、トイレ・洗面所・寝室は重要です。介護保険住宅改修でも対象になります。
トイレと浴室は本人だけでなく介助者のスペースも考える
これが、住環境コーディネーター特有の視点です。住宅改修で失敗する例として、本人だけを基準に考えることがあります。
しかし介護では、介助者が入るスペースが必要になるのです。
たとえばトイレ。本人だけなら使えても、介助者が横に入れないというケースがあります。浴室も同様です。介助が必要になると、洗い場の広さ・移乗スペース・手すりの位置が重要になります。
住宅改修は「今」ではなく「5年後」を考える
これが最大のポイントです。住環境整備は、現在の状態だけを基準にすると失敗します。
- 認知症
- 身体機能低下
- 要介護度上昇
を考えると、5年後10年後を想定した整備が必要です。
特に、
- 寝室位置
- トイレまでの距離
- 階段利用の是正
などは早めの検討が望まれます。
親の介護については、認知症だけでなく介護全体の流れを理解しておくことも重要です。 「40代から考えておきたい親の介護|慌てないために今できる5つの準備」もぜひご覧ください。
介護や認知症への備えは大切ですが、人生は不安に備えるだけのものではありません。自分自身の楽しみや生きがいを持ち続けることも、人生の後半を豊かにする大切な要素です。
趣味や創作活動が人生に与える良い影響については、 「なぜ鉛筆画を描くと人生が豊かになるのか?上達だけではない7つの魅力!」で、詳しくご紹介しています。
施設選びを進める際には、介護離職を防ぐ視点も重要です。仕事と介護を両立するための考え方については、こちらの記事も参考にしてください。 JT18「介護離職を防ぐには?親の介護と仕事を両立するための考え方と制度活用法」
認知症介護では、本人の尊厳を守ることと同時に、介護する家族の心を守ることも大切です。介護疲れやストレスを感じたときは、 JT19「親の介護で疲れたと感じたら|介護うつ・介護ストレスを防ぐための心の整え方」も参考にしてください。
認知症介護と施設選びは密接に関係しています。 JT21「親が施設に入るとき家族は何を決める?後悔しない施設選びのポイント」もあわせてご覧ください。
まとめ

親が認知症と診断されると、多くの家族は不安や戸惑いを感じます。しかし、認知症介護は、家族だけで抱え込むものではありません。
日本には、介護保険制度をはじめ、多くの支援制度や専門職が存在しています。大切なのは、困ってから慌てて対応するのではなく、正しい順番で準備と行動を進めることです。
まず、最初に頼るべき存在は、地域包括支援センターです。高齢者と家族を支える総合相談窓口として、介護保険制度や認知症支援制度について幅広く相談できます。
どこへ相談したらよいか分からない場合でも、まずは地域包括支援センターへ連絡することが安心への第一歩になるのです。
次に重要になるのが、要介護認定です。介護保険サービスを利用するためには、認定を受ける必要があります。認知症の場合は、身体機能だけでなく、認知機能や日常生活への影響も評価対象になります。
認定調査では、実際の困りごとを正確に伝え、必要な支援につなげることが大切です。認定後は、ケアマネジャーとの連携が始まります。ケアマネジャーは、介護サービスを調整する司令塔のような存在になるのです。
本人や家族の状況を丁寧に伝えながら、無理のない介護体制を整えていくことが重要になります。認知症は、進行性の病気であるため、定期的な見直しも欠かせません。
また、福祉用具の活用も大きな助けになります。手すりや歩行器だけでなく、見守り機器や徘徊対策機器なども介護負担の軽減に役立ちます。
福祉用具は、「できないことを補うため」ではなく、「できることを続けるため」に利用するという視点が大切です。
さらに、住宅改修や住環境整備も重要なテーマです。転倒予防や安全確保だけでなく、本人が安心して暮らし続けられる環境づくりが求められます。介護保険制度を活用すれば、一定の住宅改修費用について補助を受けられる場合もあります。
そして、福祉住環境コーディネーターの視点で考えるならば、住環境整備は「今」だけを見てはいけません。
たとえば、
- 車イスで通れる廊下幅は確保できているか
- 曲がり角で方向転換できるか
- トイレや浴室へ安全に移動できるか
- ドアは開き戸よりも、引き戸の方が適していないか
- 介助者が入るためのスペースは充分か
- 将来的に階段利用が難しくなった場合はどうするか
といった視点も重要になります。
介護では、本人だけでなく介助者の動きも考慮しなければなりません。とくに、トイレや浴室は介助が必要になる場面が多く、本人が利用できるだけでは不充分な場合があるのです。
認知症介護は、長期間にわたる可能性があります。しかし、制度や専門職を上手に活用し、住環境を整えることで、本人も家族も安心して生活を続けることができます。
今回の記事でお伝えしたポイントをまとめると次の通りです。
- 認知症と診断されたら、地域包括支援センターへ相談する。
- 要介護認定を受けて、介護保険制度を活用する。
- ケアマネジャーと連携して、無理のない介護体制を整える。
- 福祉用具を活用して、安全性と自立支援を高める。
- 住宅改修制度を利用して、事故を予防する。
- 住環境整備は5年後、10年後も見据えて考える。
- 本人だけではなく、介助者の動線も考慮する。
認知症になったから、人生が終わるわけではありません。適切な支援と住環境整備によって、本人らしい生活を続けることは充分可能なのです。
40代のうちから、制度や介護の流れを知っておくことが、将来の安心につながる大きな備えになるでしょう。
介護が進行すると、在宅介護だけでなく介護施設への入所を検討する場面も出てきます。
施設の種類や選び方については、 「親の施設入所を考え始めたら|老人ホーム・介護施設の種類と選び方をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
将来の介護や親の認知症が不安な方へ
親の介護や認知症への備えは、早く知るほど選択肢が広がります。
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私自身も、起業や転職、失敗や挑戦を繰り返しながら、人生の後半を少しずつ整えてきました。このサイトでは、その経験や学びをもとに、人生の後半を穏やかに充実させるヒントを発信しています。
この記事を書いた人
中山眞治
人生の後半を整えるアドバイザー
ファイナンシャル・プランナー(AFP)・終活カウンセラーなどの資格と人生経験をもとに、 40代以降の人生を「整えながら生きる」ための情報を発信しています。
プロフィールはこちら人生の後半は、遅すぎるのではなく、これから整えていける時間です。あなたらしい歩み方を見つけるヒントになれば幸いです。

