こんにちは。人生の後半を穏やかに整えるヒントを発信している、中山眞治です。

筆者近影 作品「月のあかりに濡れる夜Ⅳ」と共に
子どもが無事に独立することは、親にとって喜ばしい出来事です。しかし、長年続いてきた子育てが一段落すると、安心や喜びと一緒に、寂しさや喪失感が押し寄せることがあります。
食事を用意する人数が減り、家の中も静かになり、これまで子どもの予定を中心に動いていた時間が空いてしまう。「これから何を楽しみに生きればよいのだろう」、と戸惑っても不思議ではありません。
子どもの独立を喜ばなければならないと思うほど、寂しいとは言いにくくなります。しかし、その気持ちは子どもの自立を邪魔したいからではなく、それだけ長い間、親として家族を支えてきた証しでもあります。
大切なのは、寂しさを無理に打ち消すことでも、独立した子どもを再び生活の中心に戻すことでもありません。親子のつながりを残しながら、お互いの人生を尊重し、親自身も自分の時間を生き始めることです。
この記事では、子どもの独立によって生まれる心と暮らしの変化を受け止め、夫婦関係や子どもとの距離も整えながら、「親としての人生」から「自分自身の人生」へ軸足を移していく方法を考えます。
それでは、早速見ていきましょう!
子どもの独立を喜びながら寂しくなるのは自然なこと

子どもが進学や就職、結婚などをきっかけに家を離れ、自分の人生を歩き始めることは、親にとっては喜ばしい出来事です。「ここまで無事に育ってくれた」と、安心する人も多いでしょう。
ところが、実際に子どもがいなくなった家で暮らし始めると、喜びだけでは説明できない感情が生まれることがあります。
食卓の席が空き、玄関で「ただいま」という声を聞くこともなくなり、家の中が急に広くなったように感じるかもしれません。
子どもの独立を喜ばなければならないと思うほど、「寂しい」と口にすることに後ろめたさを感じる人もいます。しかし、喜びと寂しさが同時に存在しても矛盾ではないのです。
本章では、子どもの独立後に生まれる寂しさや喪失感を否定せず、自分の気持ちを受け止めるところから考えていきます。
子どもの独立後、これからの人生をどのように過ごせばよいか迷っていませんか?
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喜びと寂しさが同時に生まれても矛盾ではない
子どもの独立を願いながら、実際に離れて暮らすと寂しくなる。この二つの気持ちは、どちらも自然なものです。
親は、子どもが自分の力で生きられるようになることを願い、長い時間をかけて育ててきました。独立は、その願いが実現した結果でもあります。
一方で、子どもの食事や生活を気にかけることは、長年にわたって日常の一部だったはずです。その生活が変われば、心に空白が生まれるのは無理もありません。
「独立できてよかった」という喜びと、「もう少し一緒に暮らしたかった」という寂しさは、同時にあってもよいのです。すぐに気持ちを切り替えようとはせず、どちらも自分自身の正直な感情として認めてみましょう。
家の静けさが子どもの不在を実感させる
子どもの独立後の寂しさは、何気ない日常の中で強く感じることがあるものです。
いつもの癖で、子どもの分まで食材を買ってしまう。夕食の準備を始めてから、作る量が減ったことに気づく。洗濯物が少なくなり、部屋を片づける時間も短くなる。こうした小さな変化が、子どもの不在を何度も実感させます。
手がかからなくなって楽になったはずなのに、その静けさを素直に喜べず、戸惑う人もいるでしょう。それは、長年続いた生活のリズムが変わり、心がまだ新しい暮らしに追いついていないからです。
慣れるまでの時間には個人差があります。すぐに前向きになれなくても、自分を責める必要はありません。
親として必要とされないように感じてしまう理由
子育て中は、食事を作る、話を聞く、体調を気遣うなど、親としての役割が毎日の中にはっきりとありました。
ところが、子どもが独立すると、その役割が急に減ります。連絡が来ない日が続いたり、子どもが自分自身で問題を解決したりする姿を見て、「もう自分は必要とされていないのではないか」、と感じることもあります。
しかし、頼られる機会が減ったことは、親の存在価値が失われたことを意味しません。子どもが自分で生活できるようになったのは、それまで親のあなたが支えてきた時間があったからです。
親の役割がなくなるのではなくて、日常を支える親から、必要なときに話を聞いて見守る親へ変わっていきましょう。寂しさを埋めるために、子どもに再び頼らせようとせず、まずは役割が変わり始めたことを受け止めることが必要になります。
寂しさを急いで消そうとせず言葉にしてみる
寂しさを感じると、予定を詰め込んだり、新しい趣味を探したりして、気持ちを紛らわせたくなることがあります。しかし、行動を増やす前に、今の気持ちを言葉にすることも大切です。
「家の中が静かになって寂しい」「食事を作る張り合いがなくなった」「自分の役割がなくなったように感じる」など、何に寂しさを感じているのかを書き出してみましょう。
夫婦で暮らしている場合には、お互いの気持ちを話す方法もあります。ただし、同じ親でも感じ方は異なります。
一方が寂しさを感じていても、もう一方は自由な時間が増えたことを喜んでいるかもしれません。その違いを愛情の差と考えず、それぞれの受け止め方を尊重しましょう。
寂しさを言葉にすると、自分が何を失ったように感じているのかが見えてきます。それが、新しい暮らしを整える出発点にもなります。
子どもの独立後に生まれた一人の時間を、寂しさだけで終わらせず、少しずつ穏やかな時間へ変えていきたい方は、次の記事も参考にしてください。 JT59「老後の孤独が怖い人へ|一人の時間を「寂しさ」から「豊かさ」に変える考え方」

子どもの独立後に寂しさや喪失感が生まれるのは、それだけ長い間、親として子どもを支えてきたからです。喜びと寂しさの両方を認め、心が新しい生活に慣れるまで、自分を急がせないようにしましょう。
親の役割は「終わる」のではなく「変わっていく」

子どもが独立すると、食事や身の回りの世話をする機会が減り、親としての役割が終わったように感じることがあります。
子どもの予定を気にかけ、必要なときには手を差し伸べる生活が長かった人ほど、その変化を大きく感じるでしょう。
しかし、子どもが家を離れたからといって、親子の関係までなくなるわけではありません。変わるのは、親であることそのものではなく、子どもとの関わり方です。
独立した子どもには、自分で考え、選び、失敗しながら生活を築く時間が必要です。親にも、子どもの生活を支えることに使ってきた力を、自分自身の暮らしへ向け直す時期が訪れます。
本章では、世話をする親から見守る親へ役割を移し、親子がお互いの人生を尊重できる関係について考えましょう。
世話をする親から見守る親へ役割を移す
子どもが家にいた頃は、毎日の生活を通して自然に様子を知ることができました。帰宅時間や食事、体調などに変化があれば、すぐに気づけたでしょう。
ところが、離れて暮らすようになると、子どもの生活は見えにくくなります。そのため、「きちんと食べているだろうか」「仕事で困っていないだろうか」、と心配になることがあるのです。
親が子どもを気にかけるのは自然なことです。ただし、心配するたびに先回りして助けていると、子どもが自分で考える機会を奪ってしまう可能性があります。
これからの親の役割は、困らないように準備することから、困ったときに話を聞ける場所でいることへ変わります。すぐに手や口を出さず、子どもが自分で進む力を信じることも、新しい支え方の一つなのです。
連絡の回数で親子の愛情を確かめない
子どもからの連絡が減ると、「自分のことを忘れているのではないか」「親を大切に思っていないのではないか」、と不安になることがあります。親から何度も連絡し、返事が遅いことでさらに寂しくなる場合もあるでしょう。
しかし、連絡が少ないことと、親への愛情がないことは同じことではありません。仕事や新しい家庭など、自分の生活に向き合っているために、連絡する余裕がないこともあるのです。
毎日のように連絡を求めたり、返事がないことを責めたりすると、子どもは連絡そのものを負担に感じるかもしれません。親も、返事を待つことに気持ちを左右されやすくなってしまいます。
連絡の頻度について親子で話せるのであれば、「週末に一度」「何かあれば連絡する」など、お互いに無理のない形を考えてみましょう。回数ではなく、安心して連絡を取り合える関係を残すことが大切です。
助言する前に子どもの選択を尊重する
親は、子どもが失敗しそうなときほど、経験をもとに助言したくなります。住まいや仕事、結婚、お金の使い方など、人生に関わる問題であれば、心配が強くなるのも無理はありません。
ただ、親にとって正しいと思える道が、子どもにとっても最善とは限りません。成人した子どもには、自分の人生を選び、その結果を引き受ける権利があります。
何かを伝えたいときには、いきなり結論を示すのではなく、「話を聞こうか」「意見を言ってもよい?」、と確認してみましょう。子どもが求めることは、解決策ではなく、ただ気持ちを聞いてもらうことかもしれません。
心配を押しつけるのではなく、必要なときに相談できる存在でいる。その距離感が、独立後の親子関係を穏やかに保ちます。
親子のつながりを残しながら境界線を整える
子どもとの距離を取ることは、冷たい親になることではありません。親子それぞれの生活を守りながら、無理のない形でつながりを続けるということです。
訪問するときには事前に予定を聞く、子どもの生活や人間関係に必要以上に踏み込まない、金銭的な援助は親自身の老後を損なわない範囲にするなど、一定の境界線が必要になります。
私が、ファイナンシャル・プランナー(AFP)として老後のお金について学んできた中でも、子どもを助けたい気持ちから、親自身の生活資金まで取り崩してしまうことには、注意が必要だと感じるのです。
親子のつながりは、どちらかが我慢し続けることで守るものではありません。お互いに別の人生を生きていると認めたうえで、必要なときには支え合える関係を目指しましょう。
子ども中心だった暮らしから夫婦と個人の暮らしへ

子どもが独立すると、夫婦二人で過ごす時間が増えます。それまで子どもの学校や仕事、食事などを中心に成り立っていた生活から、夫婦だけの生活へ変わるため、最初は戸惑うこともあるでしょう。
子どもについて話すことが、夫婦の会話の中心だった場合には、何を話せばよいのか分からなくなることもあります。また、自由な時間が増えたことで、それまで気づかなかったお互いの生活習慣や考え方の違いが目につくかもしれません。
ここで大切なのは、子どもが生まれる前の夫婦関係へ戻ろうとすることではありません。長い年月を重ねてきた今の二人に合う関係を、新たに作っていくことです。
本章では、一緒に過ごす時間とそれぞれの時間を大切にしながら、子どもの独立後の夫婦関係を整える方法を考えます。
子どもがいなくなった後に夫婦の違いが見えてくる
子育て中は、夫婦の予定や役割が、子どもを中心に決まることが多くなります。考え方に多少の違いがあっても、毎日の忙しさによって深く向き合わずに済んでいたこともあるでしょう。
ところが、子どもが独立して二人の時間が増えると、生活のペースや休日の過ごし方、会話の量などの違いが見えやすくなります。一方は夫婦で出かけたいと思い、もう一方は一人でゆっくり過ごしたいと考えるかもしれません。
こうした違いは、夫婦関係が悪くなったから生まれたわけではありません。もともとあった違いが、暮らしの変化によって見えるようになっただけの場合もあるのです。
相手も自分と同じ気持ちだと決めつけず、「これから、どのように過ごしたいと思っている?」、と尋ねるところから始めてみましょう。
夫婦だからといって同じ楽しみを持つ必要はない
子どもが独立した後は、夫婦共通の趣味を持った方がよいと考える人もいます。一緒に楽しめるものがあれば、会話や外出のきっかけも増えるでしょう。
しかし、無理に同じ趣味を始める必要はありません。興味のないことに付き合い続ければ、どちらかが負担を感じるようになります。
一緒に食事や旅行を楽しむ一方で、それぞれが友人と会ったり、好きなことに取り組んだりしてもよいはずであり、別々に過ごした時間があるからこそ、相手に話したい出来事が生まれることもあるのです。
夫婦であることと、いつも一緒にいることは同じではありません。共通の楽しみを少し持ちながら、お互いの関心や過ごし方を尊重することが、二人の暮らしに無理のないゆとりを作ってくれます。
一緒に過ごす時間と一人の時間を分けて考える
夫婦二人の生活になると、相手の予定や行動が以前より気になることがあります。「せっかく時間があるのだから、一緒に過ごしたい」と思う一方で、相手は自分の時間を大切にしたいと感じているかもしれません。
大切なのは、どちらが正しいかを決めることではなく、一緒に過ごす時間と、一人で過ごす時間の両方を暮らしの中に作ることです。
たとえば、夕食は一緒に取る、月に一度は出かけるなど、二人で大切にしたい時間を決めます。そのうえで、それ以外の時間は、それぞれが自由に使えるようにします。
一人の時間を求めることは、相手を嫌っているという意味ではありません。適度な距離があることで気持ちに余裕が生まれ、一緒に過ごす時間も穏やかなものになるのです。
これからの暮らし方と将来について話し始める
子どもの独立は、これからの夫婦の暮らしを話し合う機会にもなります。今後も現在の家に住み続けるのか、仕事をいつまで続けるのか、老後をどのように過ごしたいのかなど、少しずつ確認しておきたいこともあるでしょう。
私が、介護や福祉、終活について学んできた中で感じるのは、夫婦であっても将来への希望や不安が同じとは限らないということです。元気なうちに話しておかなければ、お互いに「相手も同じように考えている」、と思い込んでしまうのです。
一度ですべてを決める必要はありません。まずは「これからやってみたいこと」や「今の暮らしで変えたいこと」など、話しやすいテーマから始めましょう。
子どもを通してつながる夫婦から、互いの人生を尊重して支え合う夫婦へ変わることが、これからの安心につながります。

子どもの独立後は、夫婦関係を昔に戻すのではなく、今の二人に合う形へ整え直す時期です。一緒に過ごす時間とそれぞれの時間を持ち、将来について少しずつ話し合いましょう。
増えた時間を「余った時間」から「自分の時間」へ変える

子育て中は、自分のことを後回しにしてきた人も少なくないはずです。仕事や家事をしながら、子どもの食事、学校の行事、送迎などを優先しているうちに、自分が何をしたいのかを考える機会が減ってはいませんでしたか?
子どもが独立すると、それまで子どものために使っていた時間が空きます。しかし、自由になったはずの時間を前にして、「何をすればよいのか分からない」、と戸惑うこともあるでしょう。
そこで、すぐに夢中になれる趣味や大きな生きがいを見つけようとすると、かえって焦りが生まれます。必要なのは、人生を変える何かを探すことではなく、自分のために時間を使う感覚を少しずつ取り戻すことです。
本章では、増えた時間を単なる「余った時間」にせず、これからの自分を育てる時間へ変える方法を考えます。
すぐに生きがいや夢を見つけようとしない
子どもが独立した後に、「これからは自分の人生を楽しまなければ」、と考える人もいるでしょう。しかし、長い間、自分よりも家族を優先してきた人が、すぐにやりたいことを見つけられなくても不思議ではありません。
周囲の人が旅行や趣味を楽しんでいる姿を見ると、自分だけが取り残されたように感じることもあるでしょう。それでも、他人と同じように過ごす必要はないのです。
最初から、一生続けられる趣味や大きな目標を探すのではなく、「少し気になる」「一度試してみたい」、と思えることに目を向けてみましょう。実際に試してみて合わなければ、やめても構いません。
これからの楽しみは、正解を選ぶものではなく、いろいろ試しながら見つけていくものです。何も決まっていない時間も、次の暮らしへ移るために必要な時間と考えてみましょう。
子育て中に後回しにしたことを思い出す
新しい楽しみが思いつかないときには、まったく未知のものを探すよりも、過去に関心を持っていたことを思い出す方法もあります。
以前は好きだったのに、忙しくなってやめたことはないでしょうか?読みたかった本、行ってみたかった場所、習ってみたかったことなど、子育て中に「時間ができたら」、と後回しにしたものがあるかもしれません。
紙に書き出してみると、自分が長い間しまい込んでいた関心に気づくことがあります。しかし、そのすべてを実行することはありません。図書館で本を借りる、近くの教室を調べるなど、負担の少ない行動から始められます。
過去の自分に戻るのではなく、今の年齢や暮らしに合う形で、以前の関心ともう一度出会い直してみましょう。
その際には、一人でもできる、天候や時間に左右されない、低予算で始められる、人生最後の時まで体力的にも無理なく続けられる、発表する場がある、などの要因も考慮に入れましょう。
小さな予定を自分のために入れてみる
自由な時間が増えても、何も予定を入れないままでいると、一日が長く感じられることがあります。一方で、寂しさを紛らわせるために予定を詰め込みすぎれば、心も体も疲れてしまいます。
まずは、週に一つ、自分のための予定を入れてみましょう。散歩をする、喫茶店で本を読む、気になっていた場所を訪ねるなど、小さなもので充分です。
大切なのは、誰かの都合ではなく、自分の気持ちを基準に決めることです。「家族の役に立つか」「将来のためになるか」、だけで判断せず、自分自身が心地よく過ごせるかどうかを大切にしましょう。
自分で予定を決め、それを実行する経験を重ねると、子ども中心だった時間が少しずつ自分の時間へ変わっていくのです。
楽しみを結果や上達だけで評価しない
何かを始めても、「上達しなければ意味がない」「人に見せられるものにしたい」と考えると、楽しむ前に苦しくなることがあります。
これからの時間に必要なのは、成果だけではありません。取り組んでいる間に気持ちが落ち着く、次の取り組みの予定が楽しみになる、人と話すきっかけが増えるといった変化にも価値があるのです。
一つのことを長く続けてもよく、季節や気分に合わせて関心を変えても構いません。楽しみ方を他人と比べず、自分の暮らしが少し心地よくなるかどうかを基準にしましょう。
子どものために使ってきた力や時間を、これからは自分の心を整えるためにも使う。その積み重ねが、親としての役割だけに支えられていた生活から、新しい生活へ移る助けになります。
れからの生活に合う趣味や小さな生きがいを、焦らず見つけていきたい方は、次の記事もあわせてご覧ください。 JT54「定年後に生きがいを失わないために|人生後半を楽しむ趣味の見つけ方」
親としての人生を大切にしながら自分自身の人生を進む

子どもの独立後に、自分自身の時間を生き始めることは、親として過ごしてきた年月を手放すことではありません。子どものために悩み、支え、喜んできた経験は、これからも自分の人生の大切な一部として残るのです。
ただし、親であることだけが自分自身の存在価値になっていると、子どもの生活に変化があるたびに、心が大きく揺れやすくなります。
子どもから必要とされることで、自分の役割を確かめるのではなく、自分自身の暮らしにも目を向けることが必要です。
これからは、子どもの幸せを願うことと、自分自身の幸せを育てることを分けて考えてみましょう。どちらか一方を選ぶのではなく、両方を大切にすることができます。
本章では、親として歩んできた人生を肯定しながら、自分自身の人生へ軸足を移していく方法を考えましょう。
親であること以外の自分を少しずつ取り戻す
子育てをしている間は、「誰かの親」、として見られる機会が多くなるものです。自分自身も、親として何をすべきかを優先し、個人としての希望や関心を後回しにしてきたかもしれません。
子どもが独立した今、「親であること以外に、自分には何があるのだろう」、と不安になることもあるでしょう。しかし、これまでの人生には、親以外の役割や経験もあったはずです。
一人の人間として好きだったこと、得意だったこと、大切にしてきた考え方を思い出してみましょう。これからやってみたいことだけではなく、どのような毎日を送りたいかを考えることも役立ちます。
特別な肩書きや、目標を見つける必要はありません。自分で一日の過ごし方を選び、小さな楽しみを持つことも、自分自身を取り戻す一歩です。
子どもの幸せと自分の幸せを別々に考える
子どもが幸せに暮らしている姿を見ることは、親にとって大きな喜びです。ただし、子どもの生活だけが自分の楽しみになっていると、連絡が少ないときや、親の希望とは異なる道を選んだときに、強い寂しさや不満を感じやすくなります。
子どもの幸せは、子ども自身が考え、選び取っていくものです。同じように、親の幸せも、子どもに与えてもらうのではなく、自分で少しずつ育てていく必要があるのです。
子どもが充実した生活を送り、親にも自分なりの楽しみがある。その状態は、親子のつながりを弱くするものではありません。お互いの生活を尊重できるからこそ、逢ったときに穏やかな時間を過ごせます。
子どもの人生を心配し続ける力の一部を、これからの自分の暮らしへ向けてみましょう。
お金・健康・住まい・人間関係を自分のために整える
人生の後半を自分らしく生きるためには、楽しみを持つだけではなく、暮らしの土台を整えることも欠かせません。筆者である、私たち夫婦には子どもがいないため、私自身の子育て経験として、子どもの独立後の気持ちを語ることはできません。
しかし、ファイナンシャル・プランナー(AFP)として老後のお金を考え、介護や福祉、終活について学んできた中で感じるのは、家族を大切にすることと同じように、自分自身の生活を守る準備も大切だということです。
子どもを援助する場合にも、自分たちの老後資金を圧迫しない範囲を考える必要があります。健康診断を受ける、住まいの負担を見直す、家族以外の人間関係を保つことも、将来の安心につながります。
子どもだけを頼りにせず、自分でできる準備を進めることは、子どもの負担を軽くすることにもなるでしょう。
子どもに過度な負担をかけず、自分たちの老後を支える仕組みを整えておきたい方は、次の記事も参考にしてください。 JT52「子どもに頼らない老後は実現できる?今から整えたい5つの準備」
これからの人生に自分なりの楽しみを育てる
人生の後半の楽しみは、子育ての代わりになるものを探すことではありません。子どもが占めていた心のスペースを何かで急いで埋めるのではなくて、これからの自分に合う生活を育てていくことが大切です。
学び直す、体を動かす、地域と関わる、友人と逢う、夫婦で出かけるなど、選択肢はいくつもあります。その中から、無理なく続けられて、次の日を少し楽しみにできるものを選んでみましょう。
最初は一つで充分です。続けるうちに人との出逢いが生まれたり、新しい目標が見つかったりすることもあります。
親として家族に注いできた思いや力は、これからの自分自身の人生を整えるためにも生かせます。子どもを見守りながら、自分自身の毎日も大切にする。その姿は、独立した子どもにとっても安心につながるはずです。
これからの人生に、自分と静かに向き合える楽しみを持ちたい方には、鉛筆画やデッサンも一つの選択肢になります。
上達だけを目的にせず、集中する時間や完成させる喜びを味わえる趣味として、次の記事で詳しく紹介しています。 LS300「なぜ鉛筆画を描くと人生が豊かになるのか?上達だけではない7つの魅力!」

親として過ごしてきた人生を、否定することはありません。その大切な歩みを抱えながら、自分自身の幸せや将来にも目を向け、これからの人生を少しずつ育てていきましょう。
まとめ|親としての役割が変わった後は、自分自身の人生を育てていこう

子どもの独立は、親にとっても大きな節目です。無事に育ち、自分の人生を歩き始めたことを喜ぶ一方で、家の中が静かになり、心に穴が空いたように感じることもあります。
「独立を喜ばなければならないのに、寂しいと思う自分はよくないのではないか」と、気持ちを隠してしまう人もいるでしょう。
しかし、その寂しさは、長い間、子どもを大切に育て、親としての役割を果たしてきたからこそ生まれるものです。
無理に前向きになったり、急いで新しい趣味を見つけたりする必要はありません。まずは、自分自身の生活と心に大きな変化が起きていることを認めて、新しい暮らしに慣れるための時間を持ちましょう。
本記事でお伝えした要点は、次の7つです。
- 子どもの独立を喜びながら寂しくなるのは自然なこと
喜びと寂しさは、どちらか一方に決めることはありません。相反するように見える二つの気持ちを、そのまま認めることが心を整える出発点になります。
- 寂しさを無理に隠したり、急いで消したりしない
家の静けさや食卓の変化に戸惑ったときには、何が寂しいのかを書き出したり、夫婦で話したりしてみましょう。気持ちを言葉にすると、自分が失ったように感じているものが見えてきます。
- 親の役割は「世話をする」から「見守る」へ変わる
子どもが独立しても、親であることは変わりません。ただし、先回りして助ける親から、必要なときに話を聞き、離れた場所から見守る親へ、関わり方を変えていく必要があります。
- 連絡の多さで親子のつながりを確かめない
子どもからの連絡が少ないことは、親への愛情がなくなったことを意味しません。お互いの生活を尊重し、無理のない頻度で、安心して連絡できる関係を目指しましょう。
- 夫婦共通の時間と、それぞれの時間を大切にする
子どもの独立後は、夫婦二人の新しい暮らしを作る時期です。すべてを一緒に楽しもうとせず、二人で過ごす時間と、それぞれが自由に使う時間の両方を持つことが大切です。
- 増えた時間を少しずつ自分のために使い始める
最初から、大きな生きがいや夢を見つける必要はありません。子育て中に後回しにしたことを思い出し、週に一つでも、自分のための小さな予定を入れてみましょう。
- 親としての人生を大切にしながら、自分自身の人生を進む
子どもの幸せを願うことと、自分の幸せを育てることは両立できます。親として積み重ねてきた経験を大切にしながら、自分の健康、暮らし、人間関係、楽しみにも目を向けていきましょう。
子どもとの距離を整えることは、親子のつながりを断つことではありません。子どもには子どもの人生があり、親には親の人生があると認めたうえで、必要なときには支え合える関係へ変わっていくことです。
子どもがいなくなった家の静けさにも、少しずつ慣れていきます。そして、その静けさの中から、自分が本当にやってみたかったことや、これから大切にしたい時間が見えてくるかもしれません。
親として過ごしてきた年月は、決して終わったり、失われたりするものではありません。その大切な歩みを心に残しながら、これからは、自分自身の人生にも軸足を移していきましょう。
子どもの独立は、親の人生の終わりではありません。それは、親子がお互いの人生を尊重しながら、新しい関係と暮らしを始める節目なのです。
子どもの独立後、これからの人生をどのように過ごせばよいか迷っていませんか?
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この記事を書いた人
中山眞治
人生の後半を整えるアドバイザー
ファイナンシャル・プランナー(AFP)・終活カウンセラーなどの資格と人生経験をもとに、 40代以降の人生を「整えながら生きる」ための情報を発信しています。
プロフィールはこちら人生の後半とは、遅すぎるのではなく、これからの人生を整えていける時間がまだ充分にあります。あなたらしい歩み方を見つけるヒントになれば幸いです。

