40代からの人生の整え方

40代以降の人生には、 「頑張る」だけではなく、 「整える」という視点も大切になります。

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50代から始めるフレイル予防|老後も自ら歩いて暮らせるための生活習慣

暮らしを整える

 こんにちは。人生の後半を穏やかに整えるヒントを発信している、中山眞治です。

            筆者近影 作品「月のあかりに濡れる夜Ⅳ」と共に

 さて、「まだ50代なのに、フレイル予防は早すぎるのでは」、と感じる人もいるでしょう。

 フレイルとは、年齢とともに心身の活力や人とのつながりが弱まり、健康な状態から要介護状態へ移る途中の状態を指します。

 ただし、50代のうちから、疲れやすいことや体力がなくなったからと言って、簡単に自分自身をフレイルだと、判断すべきではありません。

 しかし、今の暮らしを振り返り、これからも自分の足で歩いて外出し、人との交流や食事を楽しめる生活を考えるきっかけにすることはできます。

 特別な運動をいっぺんに始めるよりも、座りっぱなしを減らす、食事の内容を見直す、歯や口の中を手入れする、人と逢う機会を持つなど、続けられることから始めましょう。

 この記事では、フレイルの基本を確かめたうえで、50代から日常生活に取り入れられる、健康的な習慣を順番にご紹介していきます。

 それでは、早速どうぞ!

  1. フレイルとは何か?50代から知っておきたい心身の変化
    1. フレイルは健康と要介護の間にある状態
    2. 筋力だけでなく、気力や人とのつながりにも目を向ける
    3. 「疲れやすい」「外出が減った」、をどう受け止めるか
    4. 50代は将来のために生活習慣を見直す時期
  2. 歩く力を保つために、毎日の体の動かし方を見直す
    1. 座りっぱなしの時間に気づき、こまめに立つ
    2. 買い物や通勤など、普段の歩く機会を生かす
    3. 脚や体幹を使う動きを無理のない範囲で続ける
    4. 体調や持病に合わせて運動量を調整する
  3. 食事とお口の健康を、50代からの暮らしの土台にする
    1. 一人暮らしでも、主食・主菜・副菜を揃える
    2. 自炊にこだわらず、惣菜・冷凍食品・外食を組み合わせる
    3. よく噛んで食べるために、歯と口の状態を確かめる
    4. 睡眠と食事のリズムを整え、食べ過ぎにも気をつける
  4. 人とのつながりと外出する機会を少しずつ保つ
    1. 仕事以外にも気軽に話せる相手を持つ
    2. 趣味や学びを、外へ出るきっかけにする
    3. 地域の活動は自分に合う距離感で選ぶ
    4. 一人の時間も大切にしながら孤立を防ぐ
  5. 無理なく続けるための生活設計と相談の目安
    1. 今の生活から変えられることを一つ選ぶ
    2. 運動・食事・口腔・交流を一週間単位で振り返る
    3. 続かなかったときには、方法を小さく調整する
    4. 気になる変化が続くときには医療機関などに相談する
  6. まとめ|50代からのフレイル予防は、毎日の暮らしを整えることから始める

フレイルとは何か?50代から知っておきたい心身の変化

 「フレイル予防」と聞くと、足腰が弱ってから始めるものだと思うかもしれません。

 しかし、老後も自分の足で歩いて買い物に行き、好きな場所へ出かけるためには、今の暮らし方に目を向けることが大切です。

 一方、疲れやすいからといって、それだけでフレイルと判断してはいけません。

 本章では、フレイルの意味と心身の変化を整理して、50代から無理なく備えるための考え方を確認します。

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フレイルは健康と要介護の間にある状態

 フレイル(※)とは、年齢を重ねる中で心身の活力などが低下して、健康な状態から介護が必要な状態へ移る途中にある状態を指します。

 「年を取れば誰もが同じように衰える」、という意味ではなく、体調を崩したときなどに、以前よりも回復しにくくなることにも目を向ける考え方です。

 この言葉を知る目的は、自分自身に「フレイル」、という状態を認識することではありません。暮らしの中の小さな変化に気づき、食事や体の動かし方、人との交流を見直すきっかけにすることが重要になります。

 たとえば、以前は歩いて出かけていた近所の店へ、車で行くようになった場合でも、理由はさまざまです。

 忙しくなったのか、暑さを避けているのか、歩くこと自体が負担になったのか。その背景を落ち着いて振り返れば、必要な対応も見えてきます。一つの行動だけを取り上げて、健康状態を決めつけないことが大切です。

厚生労働省:健康長寿に向けて必要な取り組みとは?100歳まで元気、そのカギを握るのはフレイル予防だ

※ フレイルの語源は、英語で「虚弱」「老衰」「脆弱」などを意味する「frailty(フレイリティ)」ですが、従来の「虚弱」という言葉が持つ暗いイメージを和らげ、明るく前向きな気持ちで予防に取り組んでもらうために、2014年に日本老年医学会が日本語訳として提唱しました。

筋力だけでなく、気力や人とのつながりにも目を向ける

 フレイルというと、まず足腰の衰えを想像しがちです。けれども、厚生労働省は身体面に加え、心理面や社会面にも関わる状態として説明しています。

 体を動かす機会が減るだけではなく、外出がおっくうになったり、人と話す機会が少なくなったりすることにも目を向けましょう。

 とくに、仕事を中心に生活してきた人は、退職後に日々の行き先や会話の機会が変わるかもしれません。一人暮らしならば、休日に誰とも話さない日があっても、それ自体が悪いわけではありません。

 ただ、本人が望まないまま外出や交流が減っているならば、暮らしを見直すきっかけにできます。予防を考える際には、運動だけに取り組むのではなく、栄養、歯や口の健康、社会参加も合わせて考えることが勧められているのです。

 この記事でも、それぞれを特別な課題として切り離さず、毎日の生活につながるものとして扱っていきます。

厚生労働省:介護予防とは?社会参加の重要性って?

「疲れやすい」「外出が減った」、をどう受け止めるか

 「最近、疲れやすい」「前ほど出かけなくなった」。そんな変化に気づくことは、暮らしを振り返る第一歩になります。

 ただし、疲れやすさの背景には、仕事の忙しさや睡眠不足など、さまざまな事情が考えられます。変化を感じましたら、すぐに年齢やフレイルのせいにするのではなく、いつから、どのような場面で問題が発生しているのかを振り返ってみましょう。

 たとえば、休日だけ疲れて動けないなら、平日の休息が足りているかを振り返れます。外出が減った理由が、「行きたい場所がない」のであれば、体力だけでなく、楽しみや人とのつながりを考えるきっかけにもなります。

 反対に、意図しない体重の減少や、噛みにくさなど、気になる変化が続くときには、自己判断だけで済ませず、医療機関や歯科医院に相談してください。

 自分自身の変化を知ることと、自分で診断することは別です。「以前の自分と比べてどうか」、を目安にしながら、心配なことは専門家に確かめる姿勢を持ちましょう。

50代は将来のために生活習慣を見直す時期

 50代からフレイル予防を考えるのは、「もう衰えが始まっている」、と決めつけるためではありません。これから先も続けたい暮らしを思い描き、そのために今できることを選ぶためです。

 自分の足で歩いて暮らし続けたいなら、まず普段はどのくらい歩いているのか。食事を楽しみたいなら、食事の偏りや歯・口の状態はどうか。仕事を離れた後も人との接点を持ちたいのならば、今から楽しめる活動はあるか。

 こうした問いは、日常生活の中で考えられます。ここで忘れたくないのが、規則正しい生活です。忙しい日には食事の時刻が乱れ、夜更かしをしてしまうこともあるでしょう。

 毎日を、厳密な予定表どおりに過ごす必要はありませんが、睡眠、食事、日中の活動に無理のないリズムをつくることは、これからの生活を整える土台になるのです。

 睡眠不足が続くと食欲が増す場合もあり、睡眠は食生活とも無関係ではありません。この関係は後の章で具体的に取り上げます。

 50代の今、すべての習慣を一度に変える必要はありません。まずは自分自身の一週間を振り返り、続けられそうな一つを見つけることから始めましょう。

なかやま
なかやま

フレイルは足腰だけの問題ではなく、心身の活力や人とのつながりにも関わります。50代では症状探しにとらわれずに、将来も続けたい暮らしを支えるために、今の生活を見直すことが大切です。

厚生労働省:健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~快眠と生活習慣

歩く力を保つために、毎日の体の動かし方を見直す

 老後も、自分の足で歩いて暮らしたいと思っていても、忙しい毎日の中で運動の時間を新たにつくるのは簡単ではありません。

 まずは、今の生活でどのくらい体を動かしているのかを、振り返ってみましょう。買い物や家事などで、すでにおこなっている動きも出発点になります。

 本章では、座りっぱなしを減らす方法から、歩く機会や筋力を使う動きの取り入れ方まで、無理なく続けるための考え方をご紹介しましょう。

座りっぱなしの時間に気づき、こまめに立つ

 仕事でパソコンに向かい、移動中も座り、帰宅後はテレビを見る。そんな日は、運動をしていないという自覚以上に、座っている時間が長くなっていないでしょうか。

 最初にできるのは、長く座り続けている場面に気づくことです。飲み物を取りに立つ、電話の後に部屋を少し歩く、家事を一つ済ませるなど、普段の生活に小さな動きを挟んでみましょう。

 「座ったまま何時間も過ごす日が続いていないか」、を振り返ることが大切です。

 休日も同じです。休む時間は必要ですが、一日中ほとんど体を動かさない日が続くならば、近所への買い物や短いウオーキングや散歩を予定に入れる方法があります。家事のような軽い活動を増やすことも、座っている時間を減らすことにつながります。

買い物や通勤など、普段の歩く機会を生かす

 「歩く習慣をつくろう」と考えると、まとまった時間を確保しなければならないように聞こえるかもしれません。しかし、最初から特別なウオーキングや散歩を日課にしなくても、普段の移動を見直して解決することも可能です。

 たとえば、近くのお気に入りの店へ行くときに歩く、買い物の帰りに少し遠回りする、公共交通機関を使う日に歩く区間を設ける、といった方法です。一人暮らしならば、食材を買いに出ることが、歩く機会と食生活を整える機会を両立できます。

 あるいは、通勤の帰り道に、一駅手前で降りて歩きながら買い物をして帰るという方法もあります。その際には、リュックサックであれば両手が自由に使えますし、路面のすべりやすい時などでも安全を確保できます。

 尚、歩く距離を急に増やす必要はありません。今のあなたにとって負担の少ない道を選び、「行って帰ってこられる」、と感じるところから始めましょう。

 天候が悪い日や疲れている日は、室内で家事をするなど、別の動きに置き換えてもかまいません。続けられる形を見つけることが、日常の習慣につながります。

脚や体幹を使う動きを無理のない範囲で続ける

 歩く機会に加えて、脚や体幹を使う動きにも目を向けましょう。イスから立ち上がる、階段を上る、掃除をするなど、暮らしの中には筋力を使う場面がたくさんあります。

 たとえば、イスから立つときに、手すりや机へどう手を添えているか、階段を上った後に以前より強い疲れを感じないか。

 普段の動作を観察すると、自分自分の体の状態に気づきやすくなれます。ただし、階段を無理に使ったり、支えに頼らずに立ち上がったりする必要はありません。転倒しないことを優先してください。

 運動として体を動かしたい場合にも、いきなり難しい動きや長時間の運動を目標にせず、自分が安全にできるものを選びましょう。

 歩くこと、筋力を使うこと、体のバランスを保つことなど、異なる動きを組み合わせる考え方も公的な運動ガイドで示されています。

厚生労働省:健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~

体調や持病に合わせて運動量を調整する

 体を動かす習慣は、頑張る日を増やすだけでは続きません。仕事で疲れた日、よく眠れなかった日、暑さや寒さが厳しい日には、予定を軽くする判断も必要です。

 「昨日できたから今日も同じだけ」、と考えるよりも、外出できる日は買い物へ歩いて行き、疲れた日は室内で少し動くなど、その日の体調に合わせましょう。

 持病がある人や、歩くと痛み・息苦しさなどが出る人は、運動の内容や量を自己判断で増やさず、医師などに相談してください。

 また、運動を続けるためには、体を動かす時間だけでなく、食事や休息も大切です。睡眠を削って早朝の運動を始めたり、食事を抜いて歩いたりする必要はありません。生活全体のリズムの中に、無理のない活動を置いていきましょう。

歩く力を支える第一歩は、特別な運動を始めることだけではありません。座る時間、普段の移動、家事などを見直し、体調に合わせて動く機会を続けることが大切です。

食事とお口の健康を、50代からの暮らしの土台にする

 体を動かす習慣を考えるときには、食事と休息を切り離すことはできません。

 とくに一人暮らしでは、食事を簡単に済ませる日が重なっても、誰かがその変化に気づいてくれるわけではありません。また、歯や口に不具合があると、食べるものの選び方にも影響します。

 本章では、自炊だけに頼らず、食事を整える方法、噛む力を大切にする理由、そして睡眠と食事のリズムについて考えましょう。

一人暮らしでも、主食・主菜・副菜を揃える

 一人分の食事を毎回きちんと作るのは、手間がかかります。忙しい日には、おにぎりや麺類だけで済ませることもあるでしょう。

 そのような日が続いているならば、まず食事に何が足りないかを確認するところから始めてみてください。目安になるのが、主食・主菜・副菜の組み合わせになります。

 主食はご飯やパン、麺類など。主菜は魚、肉、卵、大豆製品などを使った料理。副菜は野菜を中心にした料理です。

 細かい栄養計算をする前に、食卓を見て「主菜はあるか」「野菜のおかずはあるか」、と確かめられます。厚生労働省の食事バランスガイドも、食品の名前だけではなく、料理の組み合わせを考える手がかりになります。

 たとえば、昼食がおにぎりだけなら、ゆで卵や豆腐、野菜のおかずを足す方法があります。一食で完璧に揃えようとして負担になるよりも、まずは同じものばかり食べていないかを振り返りましょう。

 食事量も、むやみに減らすのではなく、必要なものを食べられているかを考えることが大切です。

厚生労働省:食事バランスガイド

自炊にこだわらず、惣菜・冷凍食品・外食を組み合わせる

 バランスのよい食事を、「毎日、自分で一から作る」と考えると、続けにくくなってしまいます。とくに、仕事をしている一人暮らしの人は、疲れて帰った夜に調理を頑張るよりも、買ってきた食品を上手に組み合わせるほうが現実的な日もあります。

 弁当を買うなら、主菜だけでなく野菜のおかずも入っているかを確認する。麺類を選ぶ際には、卵や野菜を添える。冷凍したご飯があれば、魚の缶詰や豆腐、惣菜を組み合わせる。

 こうした小さな選び方でも、「何となく同じ食事で済ませる」状態から一歩進めます。外食や惣菜を利用する場合でも、主食・主菜・副菜を組み合わせる考え方が役立ちます。

 買い物の際には、すぐ食べられる主菜と副菜を一つずつ用意しておくのも方法です。ただし、持病などで食事に指示を受けている人は、その内容を優先してください。

 誰かの理想的な献立をそのまままねるよりも、自分自身の生活と体調に合う方法を見つけましょう。

よく噛んで食べるために、歯と口の状態を確かめる

 食事の内容を整えても、噛みにくい食品を避けるようになれば、食べられるものが限られてきます。

 以前は、普通に食べられたものが噛みにくい、片側だけで噛む、食事中に口の中が気になる。そんな変化があれば、歯や口の状態にも目を向けてください。

 毎日の歯みがきに加えて、歯科医院で定期的に歯や歯ぐき、かみ合わせなどを確認することも、食べる力を大切にする方法です。

 痛みがなくても、気になる変化を相談できます。口の働きは、食べることだけでなく、話すことや人との交流にも関わります。

 そして、軽視できないのは、「口臭」の問題です。虫歯や歯槽膿漏の臭いは、本人には気づきにくいからです。

 また、接客が多い職業の人や、社内の打ち合わせが多い場合でも大きなマイナス要因になりますし、どんなにスタイルやファッションに気を使っていても、異性との接点では大きな減点要因になり得ます。

 尚、噛むことと、脳の働きの関係に関心を持つ人もいるでしょう。ただ、この記事では「よく噛めば脳が活性化し、認知症を防げる」、といった言い方はしません。

 まず大切にしたいのは、自分の歯や口の状態に合った形で無理なく噛み、さまざまな食事を楽しめることです。噛みにくさが続く場合には、硬いものを無理に食べて確かめず、歯科医院で相談しましょう。

睡眠と食事のリズムを整え、食べ過ぎにも気をつける

 食事のバランスを考えるうえで、睡眠も見落とせません。

 帰宅が遅く、夕食後も眠るまで間食を続ける。翌朝は起きられず、朝食を抜く。そのような生活が続いているならば、食品の選び方だけではなく、根本的に一日の過ごし方を振り返る必要があるのです。

 厚生労働省の「e-ヘルスネット」では、睡眠不足が続くと食欲に関わるホルモンの分泌が変化し、食欲が増すことが説明されています。

 もちろん、寝不足の人が必ず食べ過ぎるわけではありません。それでも、「夜になるとつい食べ続けてしまう」、と感じるならば、食べることだけを責めず、睡眠が足りているかにも目を向けたいところです。

 また、慢性的な睡眠不足や不規則な睡眠リズムは、生活習慣病のリスクとも関わります。規則正しい生活とは、毎日を同じ時刻に完璧に過ごすことではありません。

 起きる時刻や食事の時刻が大きく乱れないようにして、日中に体を動かし、休む時間を確保する。その基本を、自分自身の仕事や暮らしに合わせて整えていきましょう。

なかやま
なかやま

50代からの食事は、「何を食べるか」だけではなく、「無理なく用意できるか」「よく噛んで食べられるか」「充分に休めているか」、まで含めて考えましょう。一人暮らしでも、買い物の仕方と生活のリズムを少し変えるところから始められます。

人とのつながりと外出する機会を少しずつ保つ

 体を動かし、食事や睡眠を整えることに加えて、人とのつながりにも目を向けるべきです。

 誰かに逢う予定があれば、外へ出るきっかけになり、会話を楽しむ時間にもなります。ただし、交友関係を広げることが負担になる人もいるでしょう。

 本章では、仕事以外の接点の持ち方や、趣味・地域との関わり方を考えながら、一人の時間も大切にできる方法を探します。

仕事以外にも気軽に話せる相手を持つ

 現役時代には、同僚や取引先と毎日のように話す人もいるでしょう。その一方で、休日には家族以外の人とほとんど話さない場合があります。

 今すぐ困っていなくても、退職後に仕事上の会話がなくなったら、日々の過ごし方がどう変わるかを想像してみてください。

 話せる相手は、大勢いる必要はありません。昔からの友人、近所の知人、同じ趣味を持つ人など、気軽に近況を伝えられる相手が一人いるだけでも、暮らしの中に仕事以外の接点ができます。

 一人暮らしならば、誰にも気兼ねせずに過ごせる時間を大切にしながら、話したいときに連絡できる関係を持つことも考えられるのです。

 しばらく連絡していない相手には、「元気にしていますか」、と短く伝えるところから始められます。すぐに親しい関係を築こうとせず、無理のないやり取りを重ねましょう。

趣味や学びを、外へ出るきっかけにする

 人と逢うためだけに予定をつくるのが苦手ならば、自分が関心を持てることを入口にしてみましょう。図書館へ行く、展覧会で作品を観る、地域の講座を探すなど、一人でも楽しめる外出先があります。

 趣味は、誰かと一緒に取り組まなければならないものではありません。一人で作品を観に行った帰りに気になる店へ立ち寄る、講座に参加して講師へ質問するなど、自分自身のペースで人と接する機会も生まれるのです。

 好きなことがまだ見つからない人は、以前から少し気になっていた場所を訪ねるだけでも充分です。「老後のために趣味を持たなければ」と考えると、かえって負担になります。

 まずは、行ってみたい、見てみたいという気持ちを大切にしてください。外出の目的ができれば、歩く機会も自然と増える場合も多いものです。運動と交流を別々の予定にせず、日常の楽しみの中で組み合わせる方法です。

 これから楽しめる趣味を見つけたい方は、関心のあることから無理なく始める考え方も参考にしてください。                                                  JT54定年後に生きがいを失わないために|人生後半を楽しむ趣味の見つけ方

地域の活動は自分に合う距離感で選ぶ

 地域とのつながりを考えると、役員やボランティアのように、継続的な役割を引き受ける姿を想像するかもしれません。

 しかし、最初から責任のある活動を選ぶ必要はありません。公開講座や催しに参加する、近所の施設で開かれる集まりを見学するなど、短時間の関わり方もあります。

 地域の「通いの場」について、厚生労働省は、人と話したり体を動かしたりする機会になると紹介しています。こうした場を知りたい場合には、自治体の広報紙や窓口で、参加できる活動を調べてみるとよいでしょう。

 ただし、通いの場は主に高齢者を対象とするものもあります。50代の今は、年齢や関心に合う講座・趣味の集まりから探すほうが、参加しやすい場合もあります。

 参加してみて合わなければ、別の場を探してかまいません。「地域に貢献しなければ」、と気負うよりも、自分自身が心地よく通えるかどうかを基準にしましょう。

 地域とのつながりを少しずつ育てたい方は、50代から無理なく関われる方法をこちらの記事でも紹介しています。                                                JT55 50代から始める地域とのつながり|孤立しない老後を迎えるために

一人の時間も大切にしながら孤立を防ぐ

 一人で過ごす時間が好きなことと、望まない孤立は同じではありません。静かに本を読む休日も、誰にも会わず制作に打ち込む日も、その人にとって大切な時間になり得ます。人付き合いの数だけで、暮らしの豊かさは測れません。

 一方で、「本当は誰かと話したいのに、きっかけがない」「困ったときに連絡する相手が思い浮かばない」、と感じているならば、少しずつ接点をつくってみましょう。

 決まった曜日にお気に入りの店へ行く、趣味の集まりを一度見学する、知人に近況を尋ねるなど、小さな行動から始められます。

 仕事や家事で疲れている時期は、交流の予定を増やすよりも、まずは休むことが必要かもしれません。自分自身の体調と気持ちを確かめながら、一人の時間と、人との時間の両方を選べる暮らしを目指しましょう。

人とのつながりは、人数の多さを競うものではありません。趣味や外出を楽しみながら、自分自身に合う距離感で、会話の機会を保つことが、50代から考えられる備えになります。

無理なく続けるための生活設計と相談の目安

 ここまで、体の動かし方、食事とお口の健康、人とのつながりを見てきました。

 どれも大切ですが、すべてを明日から変えようとすると負担になります。まず土台にしたいのは、食事を摂り、充分に休み、日中に体を動かす生活のリズムです。

 本章では、今の暮らしから始められることの選び方と、続け方を調整する方法、気になる変化があるときの相談について考えます。

今の生活から変えられることを一つ選ぶ

 「健康のために何かしなければ」と思っても、食事、運動、睡眠を一度に見直すのは難しいものです。まずは一週間の生活を振り返り、とくに気になる場面を一つ選びましょう。

 たとえば、昼食を麺類だけで済ませる日が多ければ、卵や野菜のおかずを加える。長く座り続けているなら、仕事や家事の区切りで立つ。夜更かしが続いている場合には、就寝前の過ごし方を見直す。

 このように、すでにある習慣に小さな変更を加える方法なら、始めやすくなります。

 一人暮らしの人は、食事を作る気力がない日の備えも考えておきたいところです。冷凍したご飯や、保存しやすい主菜を用意して、買い物の際には野菜のおかずを選ぶ。

 毎回きちんと調理できなくても、食事を整える選択肢を持てます。「理想の一日」を目標にするよりも、疲れた日にも実行できる方法を選びましょう。

運動・食事・口腔・交流を一週間単位で振り返る

 生活を見直すときには、できなかったことだけを数えないようにしましょう。一日を振り返って、「今日は歩かなかった」と落ち込むよりも、一週間の中でどんな日があったかを振り返るほうが、自分自身の生活をつかみやすくなります。

 歩いて買い物に行けた日、主食・主菜・副菜を揃えられた日、歯や口の気になることを確認した日、知人と話した日。それぞれが別々の行動に見えても、日々の暮らしの中ではつながっているのです。

 外出先で食材を買い、帰り道を少し歩き、人と挨拶を交わす日もあるでしょう。運動、栄養、口腔、社会参加を合わせて考えることは、公的な介護予防の案内でも重視されています。

 あわせて、食事と睡眠の時刻が大きく乱れていないか、休んだ後に疲れが和らぐかも振り返ります。記録を細かく付ける必要はありません。

 週末に、「続けやすかったこと」と「負担だったこと」、を一つずつ思い出すだけでも、次の一週間の参考になります。

 一人暮らしの方は、日々の健康習慣に加えて、入院や介護が必要になったときの備えも少しずつ確認しておきましょう。                                              JT62一人暮らしの老後はどう設計する?|入院・介護・認知症・死後に備える7つの仕組み

続かなかったときには、方法を小さく調整する

 新しい習慣が続かないのは、自分自身の意志が弱いからとは限りません。仕事をしている普段の時間に合わない、準備に手間がかかる、体に負担が大きいなど、方法そのものが今の生活に合っていない場合もあります。

 毎朝のウオーキングや散歩が難しければ、買い物へ行く日に歩く。自炊が負担なら、惣菜や冷凍食品を組み合わせる。交流の場に定期的に通えなければ、興味のある催しに時々参加する。始めた方法に固執せず、自分が続けられる形に変えてもよいのです。

 睡眠についても、就寝時刻だけを早めようとして無理をするのではなく、いつも夜に何をしているか、食事が遅くなる日はいつなのかを見てみましょう。

 慢性的な睡眠不足は食欲にも影響し得るため、食べ過ぎが気になるときに、睡眠を含めて生活全般を振り返ることには大きな意味があります。

 また、食事の量を思い切って減らすのではなく、充分に食べ、休むための方法を考えてみるべきではないでしょうか。

 以前の私の場合には、深夜まで飲み歩いて、最後に締めのラーメンを食べるような生活の時には、ずいぶん太ってしまいました。

 しかし、最近では、夜は9:00に眠り、朝は5:00に起きる生活をするようにしましたところ、ご飯であれば毎食120gで済むので、ずいぶん痩せられました。

気になる変化が続くときには医療機関などに相談する

 暮らしを整える努力だけで、すべての体調の変化に対応できるわけではありません。

 以前よりも酷く疲れる、意図せず体重が減る、歩くと痛みや息苦しさがあるなど、気になる変化が続く場合には、年齢のせいと決めつけず、医療機関に相談してください。噛みにくさや、歯・口の不具合があれば、歯科医院へ相談できるのです。

 また、眠れない状態や日中の強い眠気が続く場合にも、生活習慣だけが原因とは限りません。厚生労働省の案内でも、睡眠の問題が続くときには医師への相談が勧められています。

 相談するときは、「いつから」「どのようなときに」「以前と何が変わったか」、を伝えると、状況を説明しやすくなれるのです。

 フレイルかどうかを自分で判断するためではなく、今困っていることを確かめ、必要な対応を考えるために専門家を頼りましょう。

なかやま
なかやま

50代からのフレイルの予防は、完璧な生活を目指すことではありません。バランスのよい食事と規則正しい生活を土台に、体を動かす機会、お口の健康、人とのつながりを、自分に合う形で少しずつ整えていくべきなのです。

まとめ|50代からのフレイル予防は、毎日の暮らしを整えることから始める

 老後も、自分の足で歩いて暮らしたい。その願いのために、50代から特別な運動を始めたり、食生活を一度に変えたりする必要はありません。

 まずは、今の一週間を振り返り、食事、睡眠、体の動かし方、人とのつながりに目を向けることから始めましょう。

 フレイルは、健康な状態と要介護状態の間にあり、身体面だけではなく、心理面や社会面にも関わる状態です。ただし、疲れやすい日がある、外出が減ったという一つの変化だけで、自分をフレイルと判断することはできません。

 50代では将来を心配しすぎるよりも、これからも続けたい暮らしを支える習慣を考えることが大切です。

 この記事で紹介しました内容を、7つの行動に整理します。

  1. 長く座り続けていないか気づき、日常の中で立つ機会をつくる。
  2. 買い物や家事などを生かし、自分自身に無理のない範囲で体を動かす。
  3. 一人暮らしでも、主食・主菜・副菜の組み合わせを意識する。
  4. 自炊にこだわらず、惣菜や冷凍食品も使って食事を整える。
  5. 歯や口の手入れを続け、噛みにくさがあれば歯科医院に相談する。
  6. 睡眠と食事のリズムを振り返り、休む時間を確保する。
  7. 一人の時間も大切にしながら、自分に合う外出や会話の機会を持つ。

 とくに大切にしたいのは、バランスのよい食事と規則正しい生活です。睡眠不足が続くと食欲が増す場合もあり、休息と食事は互いに無関係ではありません。

 「つい食べ過ぎてしまう」と感じるときも、食事だけを責めず、夜更かしや一日の過ごし方を振り返ってみましょう。

 一方で、フレイル予防を理由にして、食事量をむやみに減らすことも避けたいところです。充分に食べ、休み、体を動かすという基本を、自分の生活に合わせて整えるべきです。

 最初の一歩は、一つで構いません。明日の昼食に主菜や副菜を足す、近所の買い物に歩いて行く、寝る前の過ごし方を見直す。続けてみて負担が大きければ、方法を変えてください。

 また、意図しない体重の減少や強い疲れ、噛みにくさなど、気になる変化が続くときには専門家に相談しましょう。

 50代から暮らしの土台を少しずつ整えることが、これからも自分自身の足で出かけ、食事や人との交流を楽しむための準備になるのです。

 フレイル予防に取り組みたいと思っても、疲れが取れず、日々の生活がつらいときもあります。

 そのようなときの生活の振り返り方や、負担の減らし方、受診の目安については、次の記事で詳しく紹介しています。                                                JT74「50代になって疲れが取れないのはなぜ?無理を続けない体調管理の始め方」

これからの人生を、自分らしく整えていきませんか?

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 毎日の暮らしに、楽しみにできる時間を一つ持ってみませんか。鉛筆画は、自分のペースで取り組める趣味の一つです。

 上手に描くことだけでなく、身近なものをじっくり眺める楽しさや、描く時間が暮らしにもたらす魅力をご紹介します。 LS300 なぜ鉛筆画を描くと人生が豊かになるのか?上達だけではない7つの魅力!

 私自身も、転職や起業、失敗や挑戦を繰り返しながら、人生の後半を少しずつ整えてきました。このサイトでは、その経験や学びをもとに、人生の後半を穏やかに充実させるヒントを発信しています。

この記事を書いた人

中山眞治

人生の後半を整えるアドバイザー

ファイナンシャル・プランナー(AFP)・終活カウンセラーなどの資格と人生経験をもとに、 40代以降の人生を「整えながら生きる」ための情報を発信しています。

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 人生の後半とは、遅すぎるのではなく、これからの人生を整えていける時間がまだ充分にあります。あなたらしい歩み方を見つけるヒントになれば幸いです。

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