こんにちは。人生の後半を穏やかに整えるヒントを発信している、中山眞治です。

筆写近影 作品「月のあかりに濡れる夜Ⅳ」と共に
さて、年金生活が始まり、現役時代よりも収入が少なくなったときに、これまでと同じ暮らしを続けられるのだろうかと、不安を感じる人は少なくありません。
食費や光熱費を節約しても、家賃や住宅ローンなどの大きな支出が変わらなければ、家計の負担はなかなか軽くならないものです。
しかし、生活水準を下げることには、心理的な抵抗もあるのでしょう。長年築いてきた暮らしを変えることが、自分の人生まで否定するように感じられる場合もあるからではなしでしょうか。大切なのは、生活の規模と人生の価値を切り離して考えることです。
この記事では、住居費の見直しや公営住宅の活用、家計の再設計に加え、健康や生き甲斐を守る方法を5つの視点から解説します。
私自身の、ファイナンシャルプランナー(AFP)・福祉住環境コーディネーターとしての視点からも、住み替え経験も交えながら、限られた収入の中でも安心して、自分らしく暮らしていくための考え方をお伝えしましょう。
それでは、早速どうぞ!
生活水準を下げることへの抵抗感を乗り越える|暮らしの価値を考え直す

年金生活で収入が減ったときに、多くの人が最初に考えるのは、食費や光熱費などを節約することではないでしょうか?
ところが、家計を見直していくと、節約の方法を知っていても、実行することが難しい場合があります。その背景には、長年続けてきた生活習慣や、これまで築いてきた暮らしへの愛着があります。
住まいを小さくする、車を手放す、外食を減らすといった変更は、金額だけで判断できるものではありません。
本章では、生活水準を下げることへの心理的な抵抗を整理して、人生の価値を損なわずに暮らしを見直す考え方を解説します。
これからの暮らしを、自分らしく整えていきませんか?
年金や家計、住まい、健康、生き甲斐など、 50代からの人生に役立つ情報をメールでお届けします。
無料登録
メールアドレスだけで無料登録できます
いつでも解除できます
収入が減っても以前の暮らしを手放せないのはなぜか
現役時代に一定の収入があった人ほど、年金生活に入ってからも、生活水準を下げることに抵抗を感じる場合があります。
たとえば、広い住宅に住み、自家用車を所有し、休日には外食や旅行を楽しむ生活が長く続いていれば、それが当たり前になっているでしょう。
しかし、定年退職によって収入が減少しても、家賃や住宅の維持費、車の維持費なども自動的に減るわけではありません。そこで問題になるのが、収入と支出の不一致です。
頭では生活を変える必要があると理解していても、「これまで頑張ってきたのだから、今の暮らしを維持したい」、という気持ちが生まれることもあるでしょう。
また、住まいの広さや所有物が、自分の社会的な立場や成功体験と結びついている場合もあります。そのため、生活水準を下げることが、単なる支出の削減ではなく、自分自身の価値を下げることのように感じられるのではないでしょうか?
しかし、収入が変わった以上、支出のあり方を見直すことは自然な対応です。過去の暮らしを否定する必要もありません。
これまでの生活には、その時々の意味や価値があったはずです。大切なのは、過去の生活を守り続けることよりも、これからの生活を安心して続けられるかどうかを考えることです。
生活水準を下げることと、不幸になることは違う
生活水準を下げると聞くと、我慢ばかりの暮らしを想像する人もいるでしょう。しかし、支出が少ないことと、生活の満足度が低いことは、必ずしも同じではありません。
たとえば、広い住宅からコンパクトな住まいに移った場合に、使える部屋は少なくなりますが、掃除や管理の負担が軽くなることもあるのです。
車を手放せば移動の自由度は変わるものの、維持費や駐車場代などの負担が減り、車の手入れに必要だった時間も無くなり、家計に余裕が生まれる可能性もあります。
もちろん、交通の不便な地域では車が生活に欠かせない場合もあるため、何でも手放せばよいというわけではありません。
重要なのは、自分にとって生活上必要なものと、習慣的に維持しているものを区別することです。また、他人との比較も、生活水準を下げることを難しくする原因になります。
同年代の知人が旅行を楽しんでいたり、立派な住宅に住んでいたりすると、自分の暮らしが見劣りするように感じるかもしれません。
しかし、他人の収入や資産、家庭の事情は外から見ただけでは分かりません。それぞれの経済状況が異なる以上、同じ生活を目指す必要もないのです。
生活の満足度を決める基準を、他人が持っているものから、自分が安心して暮らせることへ移してみましょう。
尚、加齢とともに「基礎代謝」は減少していきますので、若い時のような栄養満点の食事は肥満の原因にもなってしまいます。そして、そのまま放置すれば、生活習慣病の温床にもなってしまう場合もあるのです。^^
手放すものと、絶対に守りたいものを分けて考える
生活を見直す際に注意したいのは、支出を一律に減らそうとしないことです。確かに、収入が少なくなれば、何らかの支出を削減する必要が生じる場合があります。
しかし、健康や安全に関わる費用まで削ってしまうと、かえって生活の質が低下するおそれがあります。たとえば、食費を減らそうとして栄養バランスが偏ったり、医療費を気にして必要な受診を控えたりすることは避けたいものです。
また、人付き合いにかかる費用をすべて削減してしまえば、社会とのつながりが弱くなる可能性もあるのです。
そこで、現在の支出を「必要なもの」「できれば残したいもの」「見直せるもの」、に分けて考える方法が役立ちます。住居費や通信費、利用頻度の低いサービスなどは、生活への影響と削減効果を比較しながら検討できます。
一方、健康を維持するための、適度なカロリーとバランスの良い食事や必要な医療、安心して暮らせる住環境などは、優先して守るべき支出です。趣味についても、単純に不要な支出と決めつけるべきではありません。
少額でも楽しみを持ち続けることが、毎日の生活に張り合いを与えてくれる場合もあります。大切なのは、支出を減らすこと自体を目的にせず、自分自身にとって価値のある暮らしを維持することです。
暮らしを小さくすることを前向きな決断に変える
生活水準を見直すときには、「仕方なく減らす」と考えるのか、「これからの暮らしに合わせて選び直す」と考えるのかで、気持ちの持ち方は変わります。前者では、失ったものばかりに目が向きがちです。
一方、後者では、支出を減らすことで得られる安心感や、生活管理の負担が軽くなることにも目を向けられます。たとえば、住居費を抑えられれば、毎月の収支が改善し、将来への不安を軽減できる可能性が高くなります。
また、所有物を整理すれば、掃除や片づけに費やしていた時間を、趣味や休息に使えるようになるかもしれません。ただし、生活を一度に大きく変える必要はありません。
まずは使っていないサービスを解約する、毎月の支出を記録する、住み替えの選択肢を調べるなど、小さな行動から始めてもよいのです。
そして、変更した後の暮らしを振り返り、不便になったことと、楽になったことの両方を確認しましょう。思っていたほど困らなかったこともあれば、残しておくべきだったと気づくものもあるのではないでしょうか。
生活の再設計は、一度決めたら終わりではありません。自分自身の状況に合わせて、何度でも調整してよいのです。
過去と同じ暮らしを維持することだけが、人生の成功ではありません。今の収入と健康状態に合った生活を、自分自身の意思で選び直せることも、大切で幸福な力ではないでしょうか。

生活水準を下げることへの抵抗感には、長年の習慣や過去の成功体験、他人との比較などが関係しています。しかし、暮らしの規模を小さくすることは、人生の価値を下げることではありません。守るべきものと見直せるものを整理して、これからの自分に合った生活を選ぶことが、安心できる老後への第一歩になります。
住居費を見直して家計の土台を整える|公営住宅という選択肢

年金生活で、家計を改善したいと考えたときには、食費や日用品の節約に目が向きがちです。
しかし、毎月の家賃や住宅の維持費が大きければ、小さな節約を積み重ねても負担はなかなか軽くなりません。住まいは生活の基盤であると同時に、家計に大きな影響を与える固定費でもあります。
私の、ファイナンシャルプランナー(AFP)としての視点から、住居費を見直すことは、単に安い住宅へ移ることではありません。将来の健康や安全、暮らしやすさまで考えながら、自分に合った住まいを選び直すことです。
本章では、住居費を見直す重要性と、公営住宅の入居条件や応募方法、そして私自身の住み替え経験をご紹介します。
食費を削る前に、住居費という大きな固定費を見直す
少ない年金で暮らしていくためには、日々の節約だけではなく、毎月必ず発生する固定費を見直すことが重要です。
たとえば、住居費を月2万円減らせれば、年間24万円、10年間では240万円の負担軽減につながります。これは単純計算ですが、住居費の見直しが長期的な家計に与える影響の大きさを示しています。
一方、食費を月2万円減らすことは、健康への影響も考えると容易ではありません。もちろん、住み替えには引っ越し費用や新しい生活環境への適応が必要です。
また、家賃が安くても、交通費や光熱費が増えれば、期待したほどの節約にならない場合もあります。そのため、家賃だけで判断せず、共益費、交通費、住宅設備、医療機関や買い物への通いやすさなどを含めて比較することが大切になります。
とくに高齢期には、階段の上り下りや買い物の負担も考慮しなければなりません。住居費の削減は、単に支出を減らすためではなく、限られた年金収入の中で、安心して暮らし続けるための選択になるのです。
私の、福祉住環境コーディネーターの視点からも、加齢とともに衰えていく足腰を考えた場合には、福祉住環境に対応するバリアフリー設備の施された住環境は、年齢と共に重要度の増す部分と言えるでしょう。
都営住宅・府営住宅・市営住宅の仕組みと入居条件
公営住宅は、住宅に困っている比較的所得の低い人に対して、地方自治体などが提供する賃貸住宅です。東京都の都営住宅、大阪府の府営住宅、各自治体の市営住宅などが代表的です。
主な入居条件には、所得が基準内であること、住宅に困っていること、自治体が定める居住要件などがあります。
所得基準は、一般的に世帯の収入から所定の控除を行って計算するため、年金の年間受給額がそのまま判定額になるわけではありません。
公営住宅の収入基準には、原則となる政令月収15万8,000円以下という基準があります。ただし、高齢者世帯などについては、自治体の条例に基づき異なる基準が適用される場合もあるのです。
たとえば、東京都の都営住宅では、世帯人数や一般区分・特別区分によって所得上限が異なります。また、単身高齢者と夫婦世帯では、応募できる住宅や資格が異なる場合があります。
注意したいのは、すべての公営住宅が高齢者向けの設備を備えているわけではないことです。エレベーターの有無、階数、室内の段差、周辺環境なども確認する必要があります。
制度は自治体や募集時期によって異なる ため、応募前には必ず最新の募集案内を確認しましょう。そして、公営住宅には、敷金や更新料などは発生しません。
住居費を見直す際には、家賃だけでなく、今後の暮らしやすさや住み替えの時期も考える必要があります。
住み替えを検討する際の判断基準については、 関連記事「老後の住み替えはいつ決める?持ち家を手放す前に考えたい5つのこと」で詳しく解説しています。
公営住宅への応募方法と、当選までに知っておきたいこと
公営住宅への入居を希望する場合に、最初に確認したいのは、自治体が公表している募集情報です。
都営住宅では、定期募集、毎月募集、随時募集などが実施されています。募集の種類によって、対象となる世帯や住宅、選考方法が異なります。
一般的な流れは、募集案内の確認、申込み、抽選などによる選考、入居資格の審査、入居手続きという順番です。
申込みには、自治体の指定する方法を利用します。インターネット申込みに対応している場合もありますが、すべての募集が同じ方法とは限りません。
また、当選したとしても、所得や世帯構成などの資格審査に適合しなければ入居できません。人気のある住宅や地域では応募者が多く、何度申し込んでも当選しないこともあります。
そのため、希望する地域や住宅の条件を整理して、応募を継続し続けることが大切です。ただし、公営住宅への入居だけを前提に、現在の住まいを急いで手放すことは避けましょう。
当選までの期間は予測できません。民間賃貸住宅や自治体の住宅支援制度なども並行して調べ、複数の選択肢を持っておくことが安心につながります。
3LDKのマンションから都営住宅へ|私自身が経験した住まいの再設計
私自身も、生活のあり方を大きく見直した経験があります。以前は3LDKの分譲マンションで暮らしていたものです。
しかし、事業の失敗をきっかけに、これまでの生活をそのまま続けるのではなく、住まいを含めて暮らし全体を見直すことにしました。その際、選択肢の一つとして考えたのが都営住宅でした。
ただし、応募すればすぐに入居できるわけではありません。私の場合は、約3年半にわたって応募を続け、ようやく入居することができたのです。
そして、希望どおりに進まない期間が長く続くと、気持ちが落ち着かないこともあります。それでも、住居費を見直すことが、これからの暮らしの安定につながると考えていました。
現在暮らしている都営住宅は、全面改修が行われた住まいで、バリアフリーが配慮され、建物の前後には広めの空間があり、全戸南向きで風通しが良く、エレベーターも備わっているのです。
年齢を重ねてからの生活を考えると、こうした設備は大きな安心材料です。また、現在の住居費は、年金生活の家計への負担が比較的小さく、毎月の生活を考えるうえでも大きな助けになっています。
もちろん、これは私自身の経験であり、すべての公営住宅が同じ設備や条件を備えているわけではありません。
それでも、この経験を通して感じているのは、住まいの広さや以前の生活水準だけで、暮らしの豊かさが決まるわけではないということです。
生活の規模を見直すことは、決して人生の価値を下げることではありません。むしろ、これからの暮らしに必要な安心を選び直す機会にもなるのです。住居費は、年金生活の家計を左右する大きな固定費といえます。
少ない年金に合わせて家計を組み直す|我慢に頼らない生活費の配分

住居費などの大きな固定費を見直した後は、毎月の生活費を現在の収入に合わせて組み直すことが重要です。
年金生活では、現役時代のように収入が大きく増えることを期待できないため、限られたお金をどのように配分するかが、暮らしの安定を左右します。
しかし、家計を見直すことは、すべての支出を切り詰めることではありません。必要なものにはお金を使い、優先順位の低い支出を減らすことで、無理なく続けられる生活を目指すことが大切です。もっと言えば、「見栄を整理する」と言えば分かりやすかもしれませんんね。^^
本章では、年金収入と支出の把握から、生活費の優先順位の決め方、収入が不足する場合の対処法まで、我慢に頼らない家計の再設計について解説します。
まずは年金収入と毎月の支出を正確に把握する
家計を見直す際に、最初に行いたいのは、実際に使える収入と生活費を正確に把握することです。年金生活では、年金の額面と実際に受け取る金額が異なる部分の再確認が必要です。
介護保険料や健康保険料、税金などが差し引かれて、予想に反した手取り額になっていることもあるためです。そのため、家計を考える際には、年金の額面ではなく、実際の手取り額を基準にする必要があります。
また、公的年金は原則として偶数月に2か月分が支給されるため、当たり前ですが、入金した金額をそのまま1か月の生活費と考えないことは重要です。
たとえば、2か月分の手取り年金が24万円なら、1か月に使える金額は平均12万円となります。次に、毎月の支出を書き出してみましょう。
家賃、光熱費、食費、通信費、医療費、保険料、日用品費などを整理すると、どこにお金がかかっているのかが見えてくるのです。
ここで忘れてはいけないのが、毎月発生するわけではない支出です。家電製品の買い替え、冠婚葬祭、住宅設備の修繕、年払いの保険料などは、年間の生活費に含めて考える必要があります。
年間の支出を把握して、12か月で割っておけば、実際の生活費をより正確に見積もれます。大切なのは、家計簿を細かくつけること自体ではありません。収入の範囲で暮らせているのか、不足しているなら毎月いくら足りないのかを明確にすることです。
尚、中高年からの保険の見直しでは、世帯の収入源の人に万一のことがあった場合に、保険で資金をカバーする家族がいるかどうかによって、見直しは変わってきます。生命保険などを少額にして、月々の支払いを少なくする考え方は有効です。
削るべき支出と、削ってはいけない支出を見極める
家計の状況が分かりましたら、次は支出の優先順位を考えます。ここで注意したいのは、すべての支出を同じ割合で減らそうとしないことではないでしょうか。
たとえば、通信費を見直す場合には、現在の利用状況に合った料金プランへ変更することで、生活への影響を抑えながら支出を減らせる可能性もあるのです。
利用していない有料サービスや、必要性が低くなった契約なども、見直しやすい項目です。一方、食費や医療費については慎重に考える必要があります。
食費を減らしたために、栄養バランスを崩してしまえば、健康を損なうおそれがあります。また、医療費を気にして必要な受診を控えることも避けたいものです。
とくに高齢期には、健康を維持することが、その後の生活の自立にも関わってきます。また、趣味や人付き合いの費用をすべて無駄な支出と考えるべきではありません。少額であっても、自分自身が楽しみにしていることがあれば、生活に張り合いが生まれます。
そこで、支出を「生活に不可欠なもの」「暮らしを豊かにするもの」「見直しやすいもの」、に分けてみましょう。削減額だけではなく、減らした後に生活がどう変わるのかを考えることが大切です。
家計の再設計とは、お金を使わない生活を目指すことではなく、無駄を省き、必要なところへ適切にお金を配分するということになります。
年金だけで暮らせない場合の現実的な対処法
支出を見直しても、年金収入だけでは生活費を賄えない場合があります。そのようなときは、無理な節約を続けるのではなく、利用できる資産や制度、収入を補う方法を整理することが重要です。
まず、貯蓄がある場合には、毎月いくら取り崩す必要があるのかを確認します。たとえば、毎月2万円の不足が続けば、年間24万円、10年間では240万円が必要になります。
ただし、実際には物価の変動や医療費なども考慮しなければならないため、単純な計算だけで判断することはできません。
また、健康状態や生活状況に無理がなければ、短時間の仕事などで収入を補うことも選択肢になります。しかし、働くことが難しい人もいます。その場合は、公的な支援制度を調べることが大切です。
たとえば、一定の所得要件などを満たす年金受給者には、年金生活者支援給付金が支給される制度があります。また、医療費の負担が大きい場合には、高額療養費制度などが役立つこともあります。
日本年金機構:年金生活者支援給付金
厚生労働省:高額療養費制度を利用される皆さまへ
利用できる制度は年齢や所得、世帯状況などによって異なるため、市区町村の窓口や年金事務所などで確認しましょう。
家計の不足が続き、生活の維持が難しい場合には、自治体の自立相談支援機関などへ早めに相談することも重要です。経済的な問題を一人で抱え込まず、必要な支援を利用することも、生活を立て直すための大切な方法です。
予算を守ることよりも、長く続けられる家計を目指す
家計を見直した直後は、できるだけ支出を減らそうと意気込む人もいるでしょう。しかし、厳しすぎる予算を設定すると、日々の生活に負担がかかり、長く続けることが難しくなるのです。
たとえば、食費を極端に減らしたり、趣味や交際費を一切認めなかったりすると、生活そのものが窮屈で、つまらないものになってしまいます。
家計管理で重要なのは、毎月の予算を一円単位まで守ることではなく、長期的に収支のバランスを保つことです。そのためには、予定外の支出に備える余裕も必要です。
家電の故障や急な医療費などが発生した場合でも、生活全体が崩れないように、可能な範囲で予備費を確保しておきましょう。また、夫婦で暮らしている場合には、お互いに大切にしている支出を話し合うことも重要になります。
一方が必要だと感じているものを、もう一方が無駄だと決めつけてしまえば、家計の見直しが家庭内の不満につながることもあります。生活費の優先順位を共有し、納得できる予算をつくることが大切です。
さらに、年金額や物価、健康状態などが変われば、必要な生活費も変化します。少なくとも年に一度は家計全体を確認し、必要に応じて調整しましょう。
家計は、一度決めた予算を守り続けるためのものではありません。変化する生活に合わせて、無理なく暮らしていくためのツールなのです。

少ない年金で暮らしていくためには、手取りの収入と年間の支出を把握して、生活費の優先順位を見直すことが大切です。健康や生き甲斐を犠牲にするのではなく、必要性の低い支出から整理して、利用できる制度も活用しましょう。無理な節約ではなく、長く続けられる家計をつくることが、老後の安心につながります。
年金生活では、毎月の支出を抑えるだけでなく、年金の受給開始時期や貯蓄の取り崩し方を含めて考えることも大切です。
老後の家計と年金受給の関係については、 関連記事「年金を増やすために貯蓄を減らしてもよい?受給開始時期を決める老後の家計と暮らしの判断軸」も参考にしてください。
生活費を減らしても健康と人間関係は守る|老後の安心を支える習慣

少ない年金で暮らしていくためには、支出を見直すことが欠かせません。しかし、節約を優先するあまり、健康や人とのつながりまで失ってしまっては、安心できる老後生活から遠ざかってしまいます。
とくに高齢期には、食生活の乱れや運動不足、人との交流の減少などが、心身の健康に影響することがあります。生活費を抑えながらも、健康を維持し、地域とのつながりを保つ工夫が必要です。
本章では、食生活、運動、人間関係、住環境という4つの視点から、お金をかけすぎずに老後の安心を守る方法を解説します。
食費を削りすぎず、健康を維持する工夫
年金生活では、食費が節約の対象になりやすいものです。しかし、食事の量や種類を極端に減らすと、栄養不足につながるおそれがあります。
とくに高齢期には、筋肉量の減少や体力の低下を防ぐために、たんぱく質を含む食品などをバランスよく摂ることが大切です。
たとえば、卵、豆腐、納豆、魚の缶詰などは、比較的手頃な価格で利用しやすい食品です。旬の野菜や冷凍野菜を取り入れることも、食費を抑える工夫になります。
そして、食材をまとめて購入する場合には、使い切れる量を考えて、食品ロスを減らしましょう。また、安さだけを優先して、同じ食品ばかり食べ続けることは避けたいものです。
食費の見直しでは、単純に金額を減らすのではなく、必要な栄養を確保しながら無駄を減らすことが重要です。健康を守るための食事は、老後の暮らしを支える大切な支出になります。
なお、先ほども記述していますが、加齢とともに基礎代謝が減り、必要以上のカロリーを摂取し続ければ、肥満の原因にもなるのです。
それは、生活習慣病と密接な関係がありますので、年齢と共に、必要なカロリーとバランスの良い食事を心がけましょう。
お金をかけなくても続けられる健康習慣
健康を維持するために、必ずしも高額なスポーツジムや、特別な運動器具が必要なわけではありません。
たとえば、近所をウオーキングする、自宅で軽いストレッチや筋トレを行う、日常生活の中で意識して体を動かすといった方法があります。大切なのは、無理をせず、自分自身の体力や健康状態に合わせて続けることです。
また、自治体によっては、高齢者向けの体操教室や健康づくり講座などを無料または低料金で実施しています。こうした活動に参加すれば、運動だけでなく、人との交流にもつながります。
さらに、充分な睡眠や規則正しい生活を心がけることも、健康管理の基本です。一方、医療費を節約するために、必要な受診や服薬を自己判断で控えることは避けましょう。
健康を維持することは、毎日の生活を快適にするだけでなく、将来も自分らしく暮らし続けるための重要な備えになります。
尚、意外に見過ごされがちなのが、口腔内の健康維持です。年配者が後悔する順位の上位には、「もっと早くから虫歯や口腔内の治療をしておけば良かった」、という声もあります。いつまでも、自分の歯でおいしくし食事をしたいものです。^^
咀嚼がうまくできなければ消化に影響しますし、食物を噛むことは、脳の活性化にもつながっているという研究結果もあります。
人付き合いを減らしすぎず、孤立を防ぐ
生活費を見直す際に、交際費を減らそうと考える人もいるでしょう。確かに、無理な付き合いや負担の大きい会食などは、見直してもよい支出ではないでしょうか。
しかし、交際費を減らすことと、人とのつながりを断つことは違います。とくに定年退職後は、仕事を通じた交流がなくなるため、意識して社会との接点を持つことが大切です。
たとえば、地域のサークルやボランティア活動、図書館、公民館の講座などを利用すれば、大きな費用をかけずに交流の機会を持てます。
また、近所の人と挨拶を交わしたり、友人と電話で話したりすることも、身近なつながりを保つ方法です。もちろん、人付き合いが負担になる場合には、無理をする必要はありません。
自分自身に合った距離感で、安心できる関係を少しずつ維持することが大切です。お金をかけることよりも、気軽に話せる相手や居場所があることが、心の安定につながる場合もあるのです。
住み慣れた地域で安心して暮らすための備え
住居費を抑えるために、住み替えを検討する場合には、家賃だけではなく、周辺の生活環境も確認する必要があるでしょう。
たとえば、家賃が安くても、買い物や通院のたびに長い距離を移動しなければならない住宅では、年齢を重ねるほど負担が大きくなる可能性が高まります。
また、建物にエレベーターがあるか、室内に大きな段差がないかといった点も重要です。現在は階段の上り下りに問題がなくても、将来の身体機能の変化を考えておくことが大切でしょう。
人によっては、2階建てや3階建てに住んでいながらも、足腰の不調から1階だけで生活している家庭もあります。
私の、福祉住環境コーディネーターの視点からも、これからの加齢を考えれば、室内の段差や、手すりの設置、開き戸を引き戸へ改修といったことも検討項目に入りますが、改修工事では、とくに賃貸の場合には、事前の承認を受けることが必要です。
さらに、近隣に相談できる人や、地域の支援機関があることも安心材料になります。高齢者の暮らしについて困りごとが生じた場合には、地域包括支援センターなどへ相談する方法もあるのです。
住まいを選ぶ際には、現在の家計だけではなく、5年後、10年後の暮らしも想像してみましょう。住居費の安さと暮らしやすさを両立させることが、長く安心して生活するための重要な条件になります。
お金をかけずに生き甲斐を育てる|暮らしを小さくしても心は豊かにできる

年金生活で収入が少なくなると、これまで楽しんできた趣味や外出を控えなければならないと考える人もいるでしょう。
しかし、生活費を減らすことと、楽しみを失うことは同じではありません。むしろ、支出を見直す過程で、自分にとって本当に大切なものに気づく場合もあります。
大切なのは、お金を使うことだけに豊かさを求めず、時間の使い方や日々の小さな喜びにも目を向けることです。
本章では、生活費を抑えながらも生き甲斐を失わず、自分らしい豊かさを育てるための考え方と具体的な方法をご紹介します。
お金を使う楽しみから、時間を味わう楽しみ方へ
現役時代には、仕事の疲れを癒やすために、外食や旅行、買い物などを楽しみにしていた人もいるでしょう。もちろん、こうした楽しみをすべて手放す必要はありません。
しかし、年金生活では、限られた収入の中で楽しみ方を工夫することも大切です。たとえば、近所をウオーキングしながら季節の変化を感じたり、図書館で興味のある本を読んだりすることにも、日々の充実感を見いだせます。
自宅で絵を描く、音楽を聴く、植物を育てる、料理を工夫するといった活動も、比較的少ない費用で続けられる楽しみです。大切なのは、何にお金を使ったかではなく、その時間をどのように過ごしたかという視点になります。
忙しかった現役時代には気づかなかった身近な楽しみが、定年退職後の生活を支えてくれることもあります。暮らしの規模が小さくなっても、日々の時間を味わう余地まで失われるわけではないのです。
趣味や創作活動を、生活再設計の中に取り入れる
生活費を見直す際には、趣味にかかる費用を真っ先に削ろうとする人もいるかもしれません。しかし、趣味は単なる娯楽ではなく、日々の生活に潤い及び目標や楽しみを与えてくれるものでもあります。
たとえば、絵を描く、文章を書く、写真を撮る、手芸を楽しむといった創作活動は、工夫次第で大きな費用をかけずに始められるのです。
私自身、長年鉛筆画やデッサンの制作を続けていますが、創作活動には、自分自身の時間を主体的に使えるという魅力があります。
ただし、趣味に夢中になるあまり、道具や材料に無理な出費を重ねてしまっては、家計の負担になりかねません。
そこで、毎月の生活費の中に、無理のない範囲で趣味の予算を設ける方法があります。限られた予算の中でも、手持ちの道具を活用したり、身近な題材を選んだりすることで、楽しみ方を工夫できます。
趣味を生活から切り離すのではなく、安心して続けられる形に整えることも、生活再設計の一つなのです。
具体的には、鉛筆画や鉛筆デッサンであれば、一番最初に揃えるのは、7本の鉛筆及びスケッチブックや練り消しゴムだけで始められます。慣れてこられましたら、種類を少しづつ増やしていけばよいのです。

第3回個展出品作品 午後のくつろぎ 2019 F1 鉛筆画 中山眞治
他人と比較せず、自分自身の成長を楽しむ暮らし方
生活の豊かさを考えるときには、他人との比較から離れることも重要です。たとえば、同年代の人が海外旅行を楽しんでいたり、高価な趣味の道具を所有していたりすると、自分の暮らしが物足りなく感じられる場合もあるでしょう。
しかし、趣味の充実度は、使った金額だけで決まるものではありません。身近な題材を描いたり、庭の植物を育てたりする中でも、新しい発見や小さな達成感を得られるのです。
また、以前はできなかったことが少しずつできるようになる喜びは、年齢を重ねても味わえるものです。大切なのは、他人より優れているかどうかではなく、昨日の自分と比べて何かを学び、楽しめたかという視点になります。
もちろん、常に成長や成果を求める必要もありません。何かに夢中になる時間や、心が落ち着く時間を持つこと自体にも価値があるのです。
収入や所有物だけで自分の人生を評価しないことが、心の豊かさを守るうえで大切なのです。没頭できる時間・打ち込める趣味を持つことの重要性は、手がけてみて味わえるものになります。
この場合には、繰り返しになりますが、決して多くの資金を費やさなくても、取り組める趣味はたくさんあることに気づいてください。
また、出費が少なくて済む、歳をとって体力が衰えても続けられる、一人でもできる、天候に左右されない、何時からでもできる、(展覧会などへ)発表できる、などの条件を満足する趣味であれば、この先の展望が開けます。^^
生活の規模を小さくしても、人生の可能性は小さくならない
少ない年金で暮らしていくためには、住居費や生活費を見直し、以前とは異なる暮らし方を選ぶ必要が生じることもあります。その過程では、何かを手放す寂しさや、将来への不安を感じるかもしれません。
しかし、支出を減らすことによって家計が安定すれば、毎月のお金の心配が軽くなり、気持ちに余裕が生まれる可能性が高まります。
そして、その余裕を健康管理や趣味、人との交流など、自分にとって大切なことへ向けられるようになるのです。
広い住まいや高価な所有物がなくても、安心して眠れる場所があり、日々の楽しみを持ち、必要な人とのつながりを保てる暮らしには、充分な価値があります。
もちろん、経済的な困難を、前向きな気持ちだけで解決できるわけではありません。必要に応じて、公的な制度や周囲の支援を利用することも大切です。
そのうえで、自分自身に合った生活を選び直すことは、これからの人生を主体的に生きるための一歩になります。
生活のレベルを下げることは、人生の価値を下げることではありません。暮らしの豪華さではなく、そこでどれだけ安心して、自分らしく過ごせるかを大切にしたいものです。少ない年金でも、楽しみや生き甲斐をすべて諦めることはないのです。

身近な活動や趣味、創作活動を無理のない予算で続けられることが、日々の充実感につながります。生活の規模を見直しながら、自分にとって大切な時間を守ることが、心豊かな老後を育てる一つの方法です。
生活費を見直して時間に余裕が生まれても、その時間をどう過ごすかによって、毎日の充実感は変わってきます。
自分が打ち込めるものを見つけたい方は、 関連記事「時間を持て余す苦しい生活から抜け出したい人へ|40代から打ち込めるものを育てる7つの考え方」も参考にしてみてください。
まとめ|生活のレベルを下げることは、人生の価値を下げることではない

少ない年金で暮らしていくためには、日々の節約だけではなく、生活全体を見直すことが大切です。
現役時代と比べて収入が減少したにもかかわらず、以前と同じ生活水準を維持しようとすれば、家計に無理が生じる場合もあります。
しかし、長年続けてきた暮らしを変えることは、簡単ではありません。住まいの広さや所有物、これまでの生活習慣には、それぞれの思い出や愛着があるからです。
そのため、生活水準を下げることは、これまでの人生を否定するように感じる人もいるでしょう。けれども、過去の暮らしを大切にすることと、これからの暮らしを見直すことは、決して矛盾しません。
大切なのは、以前の生活を無理に維持することではなく、今の収入や健康状態に合った暮らしを選び直すことです。
とくに住居費は、家計に大きな影響を与える固定費です。家賃や住宅の維持費を見直すことで、毎月の負担を軽減できる可能性があります。都営住宅や市営住宅、府営住宅などの公営住宅も、条件が合えば有力な選択肢になるでしょう。
私自身、以前は3LDKのマンションで暮らしていましたが、事業の失敗をきっかけに生活を見直し、約3年半の応募を経て都営住宅に入居できました。
現在は、バリアフリーに配慮され、エレベーターも備わった全面改修後の住まいで暮らしています。年金生活における、住居費の家計負担も比較的小さくなり、暮らしの安定を考えるうえで大きな助けになっているのです。
もちろん、公営住宅への入居には条件があり、誰もが希望どおりに入居できるわけではありません。それでも、住まいを含めて生活を見直すことには、大きな意味があります。
また、家計を整える際には、健康や人とのつながり、生き甲斐まで削ってしまわないよう注意が必要です。適度な栄養とバランスのある食事や、必要な医療、無理のない運動、身近な人との交流は、安心して暮らし続けるための大切な基盤です。
趣味や創作活動についても、家計に合った予算を設けることで、無理なく楽しみを続けられます。
今回紹介しました5つの方法を、改めて整理しておきましょう。
- 生活水準を下げることへの抵抗感を整理して、他人と比較せず、自分自身に合った暮らしを選ぶ。
- 住居費などの大きな固定費を優先して見直し、公営住宅を含めた住まいの選択肢を調べる。
- 年金の手取り額と年間支出を把握して、必要なものを守りながら家計を組み直す。
- 食事、運動、医療、人とのつながりを大切にして、健康と安心を犠牲にしない。
- 無理のない予算で、趣味や創作活動を続け、自分らしい生き甲斐と心の豊かさを育てる。
生活の規模を小さくすることは、何かを諦めることだけを意味するのではありません。支出を見直すことで生まれた余裕を、自分にとって本当に大切なことへ向けられる場合もあります。
そして、経済的な事情によって生活が厳しいときには、一人で抱え込まず、利用できる制度や相談窓口を頼ることも忘れないでください。人生の豊かさは、住まいの広さや収入の多さだけでは決まりません。
安心して暮らせる場所があり、健康を守りながら、日々の小さな楽しみを感じられることにも、大きな価値があります。
生活のレベルを下げることは、人生の価値を下げることではなく、これからの生活の安心度を高められるのです。無理なく、そして自分らしく歩んでいくために、できるところから暮らしを見直してみてはいかがでしょうか。
生活費を見直しても、趣味や創作活動まで諦める必要はありません。例えば、鉛筆画は、身近な道具を使って始められる創作活動の一つです。日常の風景や身近なものに目を向けることで、新しい楽しみを見つけられるかもしれません。
鉛筆画やデッサンが暮らしや人生にもたらす魅力については、私が運営するもう一つのブログ「Light & Shadow」の記事「なぜ鉛筆画を描くと人生が豊かになるのか?上達だけではない7つの魅力!」で詳しく紹介しています。
これからの暮らしを、自分らしく整えていきませんか?
年金や家計、住まい、健康、生き甲斐など、 50代からの人生に役立つ情報をメールでお届けします。
無料登録
メールアドレスだけで無料登録できます
いつでも解除できます
私自身も、転職や起業、失敗や挑戦を繰り返しながら、人生の後半を少しずつ整えてきました。このサイトでは、その経験や学びをもとに、人生の後半を穏やかに充実させるヒントを発信しています。
この記事を書いた人
中山眞治
人生の後半を整えるアドバイザー
ファイナンシャル・プランナー(AFP)・終活カウンセラーなどの資格と人生経験をもとに、 40代以降の人生を「整えながら生きる」ための情報を発信しています。
プロフィールはこちら人生の後半とは、遅すぎるのではなく、これからの人生を整えていける時間がまだ充分にあります。あなたらしい歩み方を見つけるヒントになれば幸いです。

