こんにちは。人生の後半を穏やかに整えるヒントを発信している、中山眞治です。

筆者近影 作品「月のあかりに濡れる夜Ⅳ」と共に
さて、定年を迎え、夫婦で家にいる時間が増えたことで、以前よりも息苦しさや疲れを感じる人もいます。
相手を嫌いになったわけではなくても、朝から晩まで同じ空間で過ごし、食事や外出も常に一緒となれば、一人になりたいと思うこともあるでしょう。
しかし、「夫婦なのに一人で過ごしたいと思うのは冷たいのではないか」「定年後は二人で仲良く過ごすべきではないか」と、自分の気持ちを責めてしまう人もいます。定年前は、仕事や家事、友人関係などを通して、それぞれに別の時間と居場所がありました。
ところが、定年によって生活の形が急に変わると、家の中での距離、家事の分担、食事の時間、外出の仕方など、これまで表面化していなかった違いが目につきやすくなります。
夫婦であっても、いつも一緒にいる必要はありません。そして、一人で過ごす時間や、それぞれの趣味、友人、居場所を持つことは、相手を遠ざける行為ではなくて、関係を穏やかに保つための工夫です。
この記事では、夫婦のどちらか一方を悪者にするのではなく、お互いの時間と空間を守りながら、無理なく一緒に暮らし続けられる方法を考えます。夫婦の時間を量ではなく質で捉え、自分たちに合った距離を見つけていきましょう。
それでは、早速どうぞ!
定年後に夫婦で過ごすことがつらくなる理由

定年を迎えると、仕事の予定に合わせていた毎日の生活が大きく変わります。通勤がなくなり、朝から夕方まで夫婦が同じ家で過ごす日も増えるでしょう。
自由な時間が増えることを楽しみにしていたはずなのに、実際に生活が始まってみると、「一人で落ち着ける時間がない」「相手の行動が気になる」、と感じる場合もあります。しかし、それだけで夫婦の愛情がなくなったと考えることはありません。
定年前には、仕事や家事、買い物、友人関係などを通して、それぞれ別の時間と生活の流れがありました。定年後の息苦しさは、その均衡が急に変わったことで生じている可能性があります。
本章では、定年後に夫婦で過ごすことがつらくなる理由を整理して、新しい生活に合った距離を作る必要性について考えましょう。
定年後、夫婦で過ごす時間が増え、息苦しさや疲れを感じていませんか?
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一緒に過ごす時間が急に増えると生活の均衡が崩れる
定年前の夫婦は、意識していなくても離れて過ごす時間を持っています。一方が仕事へ出掛けている間に、もう一方は家事、仕事、買い物、趣味など、自分の予定に沿って一日を過ごしていたかもしれません。
それぞれが、別の場所で体験した出来事を夕食時に話したり、休日には一緒に外出したりすることで、夫婦の時間と個人の時間が自然に分かれていました。
ところが、定年を迎えて家にいる時間が急に増えると、その区切りがなくなります。これまで一人で使えていた部屋に相手がいる、好きな時間に食事や外出ができない、何かを始めるたびに話し掛けられる、といった小さな変化が重なるのです。
退職した側に悪気がなくても、以前から家で生活していた側は、「自分の場所にいつも相手がいる」、と感じるようになることもあります。
一方、退職した側も、家でどのように過ごせばよいのか分からず、配偶者の行動に合わせようとするかもしれません。
問題は、一緒にいることそのものではなく、急な変化に合わせて時間や空間を調整できていないことです。まずは、定年によって、夫婦の生活の均衡が変わったことを認める必要があります。
退職した側と迎える側では定年の受け止め方が違う
退職した側にとって、定年は長年の仕事から解放される節目です。通勤や職場の責任から離れ、ようやく自由に過ごせると感じる人もいるでしょう。その一方で、仕事上の肩書や居場所を失い、寂しさや戸惑いを抱く人もいるのです。
そのようなときに、身近な配偶者に会話、外出、食事などを求めることがあります。本人は夫婦の時間を大切にしたいと思っていても、迎える側には、これまでの生活を変えられているように感じることもあります。
とくに、退職する前から家庭を中心に生活していた側には、すでに自分なりの一日の流れがあります。家事をする順番、買い物へ行く時間、友人との交流、静かに休む時間などがあり、それは長い年月をかけて作られた生活です。
退職した側が、「これからは何でも二人でできる」と考え、迎える側は、「これまでの生活を守りたい」と考えれば、気持ちのずれが生まれるのは当然になります。
どちらかが冷たいわけでも、身勝手なわけでもありません。定年を異なる立場から受け止めていることを理解する必要があるのです。
生活のリズムや家事に対する考え方の違いが見えやすくなる
夫婦で同じ家で暮らしていても、生活に対する考え方がすべて同じとは限りません。起床や就寝の時間、食事を取る時刻、テレビの音量、室温、掃除の頻度など、小さな好みには違いがあるのです。
定年前は一緒にいる時間が限られていたため、こうした違いが大きな問題にならなかったかもしれません。しかし、一日を通して同じ場所で過ごすようになると、以前は見えなかった習慣が目に入るようになります。
また、退職して在宅時間が増えても、家事の分担が以前のままであれば、不公平感が生まれます。食事の用意や片付けが増えた側は、「家にいるのだから手伝ってほしい」、と感じるでしょう。
一方、退職した側は、長年続いてきた役割を当然のものと考えている場合があります。一つひとつは小さな違いでも、毎日繰り返されれば不満が積み重なります。
相手の性格を責める前に、定年後の生活に合った新しい習慣や役割を、まだ作れていないことに目を向ける必要があるのです。
一緒にいる時間の長さと夫婦仲の良さは比例しない
「仲の良い夫婦は、いつも一緒に行動するもの」、と考える人がいます。しかし、夫婦の心地よい距離は家庭によって異なります。
共通の趣味を楽しみ、外出も一緒にしたい夫婦がいる一方で、それぞれ別の趣味や友人関係を持つことで、穏やかな関係を保てる夫婦もいます。どちらか一方だけが正しいわけではないのです。
一日中同じ場所にいても、相手の行動に不満を持ち、ほとんど会話をしないのであれば、その時間が夫婦関係を深めているとはいえません。
反対に、日中は別々に過ごしていても、夕食時に落ち着いて話したり、ときどき一緒に出掛けたりできれば、お互いを大切にする関係を保てます。
大切なのは、一緒に過ごした時間の長さではなく、その時間をどのような気持ちで過ごせたかです。離れている時間に自分の好きなことを楽しみ、心に余裕を持って相手と向き合う方が、二人の時間を大切にできる場合もあるのです。
夫婦でずっと一緒にいることがつらいと感じるようでしたら、愛情の有無を疑う前に、現在の距離が近すぎないかどうかを考えてみましょう。

定年後の息苦しさは、夫婦仲が悪くなったからとは限りません。生活の均衡や役割が急に変わったことを認め、新しい暮らしに合った距離を作ることが大切です。
定年後の夫婦関係だけでなく、お金、健康、住まい、人間関係、生きがいなどを退職前から準備しておきたい人は、次の記事も参考にしてください。 JT61「定年後の生活が想像できない人へ|退職前の5年間で整えておきたい7つのこと」
夫婦それぞれの時間と生活リズムを尊重する

夫婦であっても、心地よい生活のリズムが同じとは限りません。起きる時間、食事、外出、趣味、休息の取り方には、それぞれ長年身についた習慣があります。
定年をきっかけに、何でも一緒にする生活へ急に変えると、どちらかが相手に合わせ続けることになります。自分のペースを保てない状態が続けば、相手に悪気がなくても不満や疲れがたまるでしょう。
離れて過ごす時間は、夫婦関係を弱めるものではありません。それぞれが自分の時間を持つことで心に余裕が生まれ、二人で過ごす時間も穏やかになれます。
本章では、一人になりたい気持ちを否定せず、夫婦それぞれの生活リズムと自由な時間を守る方法について考えましょう。
一人になりたいと思うことに罪悪感を持たない
配偶者と一緒にいることがつらいと感じると、「相手への愛情がなくなったのではないか」、と不安になることがあります。しかし、一人で過ごしたいという気持ちは、必ずしも相手を嫌っていることを意味しません。
人には、誰にも話し掛けられずに考え事をしたり、静かに休んだりする時間が必要です。夫婦であっても、常に相手を意識しながら生活していれば、心を充分に休められない場合もあるのです。
一人の時間を持つことは、相手を拒絶することではありません。読書、音楽、散歩、昼寝など、自分に合った方法で気持ちを整える時間です。それによって余裕が生まれれば、相手の言葉や行動にも穏やかに向き合えるようになれます。
「一人になりたいと思ってはいけない」、と我慢するよりも、「私には静かに過ごす時間が必要だ」、と認めることが大切です。自分に必要な時間を理解できれば、相手にも落ち着いて希望を伝えられるでしょう。
起床・食事・外出をすべて一緒にしなくてもよい
定年後は仕事へ行く必要がなくなるため、夫婦で同じ時刻に起き、毎回一緒に食事を摂り、外出も二人でする生活になりやすくなります。しかし、すべての行動を合わせる必要はありません。
早起きして静かな朝を楽しみたい人もいれば、遅くまで眠りたい人もいます。朝食はそれぞれ好きな時間に摂り、夕食だけは一緒に食べるという形でも構わないのです。
買い物や散歩も、毎回二人で出掛けなくてよいでしょう。一人で自由に店を見たい日もあれば、誰にも合わすことなく歩きたい日もあります。別々に外出することは、夫婦仲が悪いという意味ではありません。
すべてを一緒にしようとすると、行動の早い方が待ち、遅い方が急がされるなど、お互いに小さな我慢が生まれます。何を一緒に行い、何を別々にするかを決めることで、それぞれの生活リズムを守りやすくなれます。
相手の予定を細かく確認しすぎない
夫婦が同じ家で過ごすようになると、相手の行動が目につきやすくなります。「どこへ行くのか」「誰と会うのか」「何時に帰るのか」、と細かく尋ねることが増えるかもしれません。
安全のために、おおよその外出先や帰宅予定を伝えることは必要です。しかし、行動のすべてを確認されると、尋ねられた側は監視や束縛のように感じることもあります。
退職した側が自分の予定を持っていない場合には、配偶者の外出に関心が集中しやすくなります。悪気はなくても、「自分も一緒に行く」「早く帰ってきてほしい」、と毎回求めれば、相手の自由な時間を奪ってしまうのです。
夫婦であっても、話したくないことや、一人で楽しみたい時間はあります。必要な情報を共有した後は、相手を信頼して、細かな行動まで管理しないことが大切です。相手の自由を尊重する姿勢は、自分の自由を守ることにもつながります。
一日の中に「別々に過ごす時間」を決めておく
一人の時間が必要だと分かっていても、毎日その場の成り行きに任せていると、確保するのが難しくなります。そこで、一日の中に別々に過ごす時間を設ける方法があります。
たとえば、午前中はそれぞれ自分の予定を優先し、昼食後に必要な用事を確認する形にします。夕食後は、同じ部屋でテレビを見る日と、それぞれが、別々の場所で趣味を楽しむ日を分けてもよいでしょう。
大切なのは、細かな規則で相手を縛ることではありません。「この時間は一人で過ごしてもよい」、とお互いが分かる状態を作ることです。あらかじめ決めておけば、相手に遠慮したり、突然拒絶されたように感じたりすることを防げます。
生活のリズムは、健康状態や季節によっても変わります。一度決めた方法を守り続けるのではなく、暮らしにくさを感じましたら話し合い、夫婦に合う形へ調整していきましょう。
家の中の空間と家事の役割を見直す

定年後の夫婦が穏やかに暮らすには、過ごす時間だけでなく、家の中の空間や役割も見直す必要があります。同じ部屋にいる時間が長くなり、相手の行動が常に目に入る状態では、気持ちを休めにくくなることがあります。
また、在宅時間が増えたにもかかわらず、家事を一方だけが担い続ければ、不満が生まれるのは自然なことです。定年前の役割分担が、定年後の生活にも適しているとは限りません。
本章では、限られた住まいの中でも一人で落ち着ける場所を確保して、家事の負担も夫婦で納得できる形へ整える方法について考えます。
狭い家でも自分の居場所を一つ確保する
夫婦それぞれに専用の部屋があれば、一人の時間を作りやすくなれます。しかし、住まいの広さによっては、別々の部屋を確保できない家庭もあるでしょう。
その場合には、一つの部屋を完全に自分専用にするのではなく、机、椅子、窓際など、家の中に自分が落ち着ける場所を決める方法があります。小さな場所でも、読書や趣味に集中できれば、自分の居場所になります。
同じ部屋で過ごす場合には、相手がテレビを見ている間に、自分はイヤホンで音楽を聴くなど、互いの音や行動が負担にならない工夫も必要です。また、部屋を使う時間帯を分ければ、同じ空間でも一人で過ごすことができるのです。
大切なのは、広い場所を持つことではなく、「ここにいるときは一人で落ち着いて過ごせる」、と感じられることです。自分の居場所があれば、同じ家にいる相手を必要以上に意識せずに済みます。
相手が一人で過ごしている時間を邪魔しない
自分の居場所を作っても、相手が頻繁に話し掛けたり、用事を頼んだりすれば、心は休まりません。夫婦であっても、相手が一人で過ごしているときには、その時間を尊重する必要があります。
読書や趣味に集中しているとき、昼寝をしているとき、静かに考え事をしているときなどは、急ぎでなければ後から話し掛けた方がよいでしょう。自分にとっては短い会話でも、相手にとっては集中を途切れるものになる場合があるのです。
一人でいる相手を見て、「退屈しているのではないか」「話し相手が必要なのではないか」、と決めつけることもありません。何もせず静かに過ごす時間そのものを、心地よく感じる人もいます。
「午前中はお互いに自分のことをする」「部屋の扉が閉まっているときは、急ぎでなければ声を掛けない」など、分かりやすい合図を決めておくと、お互いの時間を守りやすくなるのです。
定年前の家事分担をそのまま続けない
定年前には、一方が仕事を中心にして、もう一方が家事を多く担っていた家庭もあります。その分担が夫婦の話し合いによって決められ、双方が納得していたのであれば、当時は合理的だったかもしれません。
しかし、定年後に在宅時間が増えたにもかかわらず、食事の用意、洗濯、掃除、買い物などを同じ人が担い続ければ、負担に偏りが生じます。とくに、毎日の昼食が加わることで、献立を考え、用意し、片付ける回数が増えることもあります。
家事は、実際に手を動かす作業だけではありません。必要な物を確認する、買い物の予定を考える、食事の献立を決めるといった、目に見えにくい負担もあるのです。
「今までもそうしてきたから」、と同じ分担を続けるのではなく、生活時間の変化に合わせて役割を見直しましょう。退職を機に、家庭の中で新しい役割を持つことは、生活のリズムを整えることにもつながります。
私の家庭の場合には、朝食は週に2度手伝い、昼食は毎日私が作っていますし、部屋の掃除、風呂掃除、ゴミ出し、米や重い物の買物は私が買いに行きます。また、家内がたくさんの買い物をしてきた際には、荷物運びもやっています。
また、夜眠る際の寝具を整えることや、家内が週に5回行っているプールから帰ってきた後の、洗濯物を干すのも、洗濯物全般の取り込みやたたむのもに私の仕事です。^^
得意・不得意と負担の大きさを話し合って分ける
家事を見直すときには、すべてを完全に半分ずつ分ける必要はありません。料理が得意な人、掃除を苦に感じない人、買い物や片付けが得意な人など、それぞれに向き不向きがあるのです。
大切なのは、家事の項目の数だけで平等を判断しないことです。毎日必要な作業と週に一度でよい作業では、負担が異なります。作業時間だけではなく、体力や精神的な負担も含めて考えます。
たとえば、一方が料理を担当し、もう一方が買い物と食後の片付けを担う方法があります。また、曜日ごとに担当を分けたり、体調の悪い日は交代したりしてもよいでしょう。
初めから完璧にできることを求めると、教える側も教わる側も疲れてしまいます。やり方が多少違っても、生活に支障がなければ相手に任せる姿勢も必要です。定期的に負担を確かめながら、双方が納得できる分担へ調整していくのです。

定年後の生活に合わせて、家の中の居場所と家事の役割を見直しましょう。それぞれが落ち着ける空間と納得できる分担であれば、同じ家でも適度な距離と居心地を保てます。
察してもらうのではなく希望を穏やかに伝える

長年一緒に暮らしてきた夫婦でも、言葉にしなければ分からないことがあります。「これくらいは察してほしい」、と我慢を続けていると、不満が限界に達したときに強い言葉となって表れることがあります。
一方、突然責められた側は、何が問題だったのか分からずに、反発したり心を閉ざしたりするかもしれません。
夫婦のどちらかを悪者にするのではなく、現在の生活の中で困っていることと、どのように変えたいのかを具体的に伝える必要があるのです。
本章では、不満が大きくなる前に話し合い、相手を責めずに自分の希望を伝えながら、二人で過ごす時間を整える方法について考えます。
不満が限界になる前に小さな違和感を伝える
夫婦関係を悪くしたくないと思うほど、小さな不満を我慢してしまうことがあります。「これくらいなら自分が我慢すればよい」と考え、相手には何も伝えないまま過ごす人もいるでしょう。
しかし、小さな違和感が毎日繰り返されると、次第に大きな不満へ変わります。ある日、いつもと同じことをされたにもかかわらず、感情が抑えられなくなることさえあるのです。
相手から見れば、それまで何も言われていなかったため、突然怒り出したように感じるでしょう。言われた内容よりも、強い口調や責められたことへの反発が先に立ち、話し合いが難しくなります。
違和感を覚えたときは、すぐに感情をぶつけるのではなく、自分が何を負担に感じているのかを整理します。そして、お互いが落ち着いているときに、できるだけ早い段階で伝えましょう。
小さな調整で解決できるうちに話すことが、深刻な対立を防いでくれます。
「あなたは」ではなく「私は」を主語にして話す
希望を伝えるときに、「あなたはいつも家にいる」「あなたは何もしてくれない」と言えば、相手は自分の存在や人格を否定されたように感じます。その結果、自分を守ろうとして言い返し、問題の解決から遠ざかってしまいます。
そこで、「あなた」を主語にして相手の行動を責めるのではなく、「私は」を主語にして自分の状態や希望を伝えましょう。
たとえば、「あなたがずっと話し掛けるから疲れる」ではなく、「私は午前中、静かに過ごせると気持ちが落ち着く」、と話します。
「何も手伝ってくれない」ではなく、「毎日の昼食の用意が負担なので、片付けは担当してほしい」、と具体的に伝えましょう。
自分の気持ちや希望として話せば、相手を攻撃せずに問題を共有できます。相手に同じ感覚を持つよう求めるのではなく、「あなたには何が必要なのか」、を理解してもらうことが目的です。
望みは曖昧にせず具体的な行動として伝える
「もう少し一人にしてほしい」「家事を手伝ってほしい」、と伝えても、どのような状態を望んでいるのかが相手に伝わらないことがあります。
一人で過ごしたいのであれば、「平日の午前9時から11時までは、それぞれ好きなことをして過ごしたい」、と具体的に話しましょう。
家事についても、「家事を手伝ってほしい」ではなく、「夕食後の食器洗いを担当してほしい」、と具体的に伝えた方が分かりやすくなります。
また、相手に何かをやめてもらうだけでなく、代わりにどのような形なら受け入れられるかを示すことも大切です。「毎回一緒に買い物へ行くのは疲れるので、週に一度は二人で行き、それ以外は一人でしたい」、と提案することもできるはずです。
希望を具体化にすれば、相手も何を変えればよいのか理解できます。最初からすべてを変えようとせず、一つの行動から試してみて、暮らしやすくなったかを二人で確かめましょう。
二人で過ごす時間は量よりも質を大切にする
定年後に同じ家で長い時間を過ごしていても、それだけで夫婦の会話が深まるとは限りません。何となく同じテレビを見ながら、それぞれが不満を抱えていることもあります。
二人の時間を大切にするとは、常に一緒にいることではありません。日中は別々に過ごし、たとえば夕食のときにはテレビを消して話す、週に一度は散歩や外食を楽しむなど、短くても心地よい時間を作ることはできるはずです。
共通の趣味がなくても問題はありません。お互いが一人で過ごした時間について話せば、新しい話題が生まれます。離れて過ごす時間があるからこそ、「今日は何をしていたのか」、と相手に関心を持てることもあります。
夫婦の時間について、世間一般の理想に合わせる必要はありません。毎日一緒に出掛けたい夫婦もいれば、必要なときだけ一緒に過ごす方が落ち着く夫婦もいます。二人が無理をせず、穏やかな気持ちで向き合える形を選びましょう。
尚、自分自身は何をしたら良いのか分からないために、奥さんが出かける際には、いつも「わしも」と言ってついていくご主人では、奥さんが疲れてしまいます。
そういう人を「わしも族」と呼ぶそうですが、なんとも情けないですね。また、奥さんの気が休まらずに気の毒です。^^
お互いが夫婦以外の居場所を持ち、必要なときは相談する

定年後の生活を夫婦だけで完結させようとすると、お互いに求めるものが多くなります。会話、外出、趣味、悩みの相談など、すべてを配偶者に求めてしまうとすれば、受け止める側には負担がかかります。
それぞれが、家庭の外にも居場所や人とのつながりを持つことは、夫婦の関係を遠ざけるものではありません。外で過ごす時間や、新しい経験によって心に余裕が生まれれば、家庭へ戻ったときにも穏やかに相手と向き合えるのです。
一方、夫婦だけの話し合いでは解決できず、強い対立や心身の不調が続く場合には、第三者の力を借りることも必要です。本章では、夫婦以外の居場所を持つ意味と、困ったときに利用できる相談先について考えます。
趣味や学びを通して自分だけの時間を持つ
定年後に自由な時間が増えても、打ち込めるものがなければ、毎日の関心が配偶者の行動に向かいやすくなります。
「今日はどこへ行くのか」「何時に帰るのか」、と尋ねたり、相手の外出について行こうとしたりすることが増えるかもしれません。
趣味や学びは、空いた時間を埋めるだけのものではありません。自分で予定を立て、少しずつ上達したり、新しい知識を得たりすることは、生活に張り合いを生み出します。
絵、陶芸、運動、園芸、読書、音楽、料理、創作、資格の勉強など、内容は何でも構いません。大切なのは、配偶者が参加しなくても、自分一人でも楽しめるものを持つことです。
初めから大きな目標を立てる必要はありません。図書館で興味のある本を借りる、近所を散歩する、体験講座へ一度参加するなど、小さく始められます。自分の時間を楽しめるようになると、配偶者にも自由な時間を認めやすくなれるでしょう。
友人や地域との関係を夫婦それぞれに保つ
定年後は、職場を通じた人間関係が減り、配偶者以外と話す機会が少なくなることがあります。そのため、友人、知人、地域などとのつながりを無理のない形で残しておくことが大切です。
夫婦共通の友人を持つことでもよいのですが、すべての付き合いを夫婦単位にする必要はありません。それぞれが自分の友人と逢ったり、関心のある地域活動へ参加したりしてもよいでしょう。
相手が自分を置いて出掛けることを、愛情が薄れた証拠と考えないことも必要です。別々の場所で人と交流することで、家庭の外から話題や刺激を持ち帰れます。ただし、孤立を恐れて無理な付き合いを続ける必要はありません。
頻繁に逢う友人がいなくても、近所で挨拶できる人や、行きつけの場所があるだけで社会との接点になります。夫婦それぞれが心地よい距離で、家庭の外とのつながりを保ちましょう。
親しい友人を無理に増やすのではなく、地域の中に緩やかなつながりや居場所を持つ方法については、次の記事で詳しく解説しています。 JT55「50代から始める地域とのつながり|孤立しない老後を迎えるために」
配偶者だけに生きがいや心の支えを求めすぎない
夫婦は、人生の後半を支え合う大切な関係です。しかし、配偶者一人に、話し相手、趣味の仲間、外出の相手、悩みの相談相手など、すべての役割を求めると負担が大きくなってしまいます。
自分が楽しいと感じることを、相手も同じように楽しめるとは限りません。相手が参加したくないときに無理に誘えば、誘う側は拒絶されたと感じ、誘われる側は束縛されているように感じる可能性もあるのです。
配偶者との関係を大切にしながらも、一人で楽しめること、友人と楽しむこと、地域や専門家に相談することを分けて考えましょう。支えとなる場所が複数あれば、一人の相手に依存しすぎずに済みます。
夫婦それぞれが、自分の生きがいや居場所を持つことは、心が離れることではありません。互いの世界を尊重し合いながら、必要なときには支え合える関係を作ることにつながるのです。
深刻な対立や心身の不調があるときは第三者へ相談する
夫婦で話し合い、生活の時間や空間を調整しても、問題が改善しない場合もあります。暴言、威圧、行動の監視、金銭的な支配などが続いている場合には、単なる生活習慣の違いとして我慢してはいけません。
また、夫婦関係の悩みによって眠れない、食欲がない、強い不安が続くなど、日常生活に影響が出ている場合にも、一人で抱え込まないことが大切です。
自治体の相談窓口、医療機関、法テラス、配偶者暴力相談支援センターなど、問題に応じた相談先があります。緊急の危険がある場合には、夫婦での話し合いよりも、自分の身の安全を優先してください。
私が、ファイナンシャル・プランナー(AFP)、介護、福祉、終活について学んできた中で感じたことは、人生の後半の安心には、お金や住まいだけでなく、夫婦それぞれが孤立しない仕組みも必要だということです。
二人だけで解決しようとせず、必要なときには外部の力も借りましょう。

夫婦それぞれが趣味や人とのつながりを持つことで、配偶者に頼りすぎず、適度な距離を保てます。深刻な問題や心身の不調が続く場合には、第三者や専門機関へ相談すべきです。
定年後の時間を持て余さず、自分に合った趣味や小さな楽しみを見つけたい人は、次の記事も参考になります。 JT54「定年後に生きがいを失わないために|人生後半を楽しむ趣味の見つけ方」
夫婦それぞれが自分の時間を楽しむために、一人でも取り組める趣味を持つことも大切です。身近な道具で始められ、集中する時間を楽しめる鉛筆画の魅力については、次の記事で紹介しています。
LS300「なぜ鉛筆画を描くと人生が豊かになるのか?上達だけではない7つの魅力!」
まとめ お互いの時間を守ることが夫婦の暮らしを穏やかにする

定年後、夫婦で過ごす時間が増えたことを、心から喜べない人もいます。相手を嫌いになったわけではなくても、一日中同じ空間にいることで、息苦しさや疲れを感じることはあります。
定年前には、仕事、家事、買い物、友人関係などを通して、夫婦それぞれに別の時間がありました。意識しなくても適度な距離が保たれて、それぞれの生活リズムも成り立っていたのです。
ところが、定年によって一緒にいる時間が急に増えると、その均衡が崩れます。退職した側は、夫婦で過ごす時間が増えることを楽しみにしていても、迎える側は、それまでの生活へ相手が入ってきたように感じる場合があります。
どちらかが冷たいわけでも、身勝手なわけでもありません。定年後の生活について、夫婦が異なる立場から受け止めているために、気持ちのずれが生まれているのです。
夫婦であっても、起床、食事、外出、趣味などをすべて一緒にする必要はありません。一人で過ごす時間を求めることは、相手を拒絶することではなく、自分の心を整えるために必要なことなのです。
家の中にそれぞれが落ち着ける場所を作り、一人で過ごしているときは必要以上に話し掛けないなど、お互いの時間を尊重しましょう。専用の部屋がなくても、机や椅子、部屋を使う時間帯を決めることで、自分の居場所を確保できます。
また、定年後に在宅時間が変わったならば、家事の分担も見直す必要があります。「これまでそうしてきたから」、と同じ人だけが家事を担い続けるのではなく、現在の時間、体力、得意・不得意に合わせて役割を整えることが大切です。
自分の希望を伝えるときには、相手の性格や行動を責めないようにしましょう。「あなたがいると疲れる」ではなく、「私は午前中、一人で静かに過ごしたい」、と自分の希望として具体的に伝えます。
夫婦の時間についても、長さだけで考える必要はありません。日中は別々に過ごしても、夕食時に落ち着いて話したり、時折一緒に外出したりできれば、二人の時間を充分に大切にできるのです。
今回の記事の要点は、次の7つです。
- 定年後の息苦しさは、夫婦の生活環境が急に変わることで生まれやすい。
- 一緒に過ごす時間の長さと、夫婦仲の良さは同じではない。
- 一人になりたいと思うことに、罪悪感を持たなくてもよい。
- 家の中に、それぞれが落ち着ける時間と場所を作る。
- 定年後の生活に合わせて、家事や家庭内の役割を見直す。
- 自分の希望は相手を責めず、具体的な言葉で伝える。
- 夫婦以外の居場所を持ち、必要なときは第三者へ相談する。
夫婦だけで生活のすべてを満たそうとせず、それぞれが趣味、友人、地域などの居場所を持つことも大切です。
家庭の外で自分の時間を持つことは、夫婦の心が離れることではありません。お互いに配偶者だけへ依存せず、心の余裕を保つことにつながります。
私が、ファイナンシャル・プランナー(AFP)、介護、福祉、終活について学んできた中で感じたことは、人生の後半の安心には、お金や住まいだけでなく、夫婦それぞれが孤立せず、自分らしく過ごせる仕組みも必要だということです。
深刻な対立や心身の不調が続く場合には、二人だけで解決しようとせず、第三者や専門機関へ相談してください。
定年後の夫婦に必要なのは、いつも一緒にいることではありません。お互いの時間と空間を守りながら、二人で過ごす時間を穏やかなものにすることです。それぞれの自由を尊重し、自分たちに合った夫婦の距離を少しずつ作っていきましょう。
定年後、夫婦で過ごす時間が増え、息苦しさや疲れを感じていませんか?
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この記事を書いた人
中山眞治
人生の後半を整えるアドバイザー
ファイナンシャル・プランナー(AFP)・終活カウンセラーなどの資格と人生経験をもとに、 40代以降の人生を「整えながら生きる」ための情報を発信しています。
プロフィールはこちら人生の後半とは、遅すぎるのではなく、これからの人生を整えていける時間がまだ充分にあります。あなたらしい歩み方を見つけるヒントになれば幸いです。

